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環境基本計画ができあがるまで

−策定予定の自治体のために−

取締役主席研究員 西宮 幸一

岐阜市環境基本計画の概要

 岐阜市の環境基本計画には、数多くの岐阜市の環境資源をよりよい形で未来に引き継ぐとともに、環境配慮型ライフスタイルの定着による環境問題の解決をめざし、4つの〈望ましい環境像〉と、その実現のための具体的方策が盛り込まれている。

 また、環境の現況や環境保全の取り組みの効果を推定し、その後の施策に役立てるための指標キーワードとして、「みどり」「リサイクル」「環境学習」等27の環境要素のそれぞれに、3〜8程度の「環境ものさし」が設定されている。

第1ステップ
−策定フレームの整理(1996年1〜4月)

 環境基本計画の内容が充実するかどうかは、当初の段階でのコンセプトづくりにかかっているといえる。そこで、まず所管課である岐阜市環境保全課との間で、目標年次や想定される理念、策定スケジュール、調査対象項目、市民参加の導入方法など、計画の策定フレームについて時間をかけて議論した。

 検討に当ってとくに配慮したのは、94年度の「岐阜市第四次総合計画」との整合性である。今回は、そこに掲げられた、パートナーシップを定着させて岐阜のまちを暮らしやすくしようという「市民オーナーシップ計画」の考え方を活かす試みとして、市民がまち歩きや学習会などを通じて環境の現況を把握し、この基本計画への提案をまとめるワーキングチーム「ぎふ環境クラブ」(以下環境クラブと略)を発足させることになった。

 また、計画の実効性を支える庁内体制の強化を意図し、調査段階から関係各課と連携することとした。具体的には、庁内組織・「岐阜市環境行政推進会議(以下推進会議と略)」に部会(係長級職員によるワーキングチーム)を設け、全庁的な議論を通じ環境行政の課題を抽出することにした。

第2ステップ
−調査のための準備(1996年4〜5月)

 この時期は各種の資料収集に加え、環境クラブ参加者募集に関する事務処理や市内各団体への推薦依頼、半年に及ぶ環境クラブのプログラムの企画・調整に時間を費やした。

 一方、推進会議については、部会発足に向けた庁内調整が進められたほか、都市と自然が混在する岐阜市の特徴や経済活動とライフタイルの関係性が環境に及ぼす影響などを考慮し、「都市と自然」「産業と生活」それに「市民文化」の3部会の設置が決められた。

 さらに、次年度の「岐阜市環境基本計画検討委員会(以下検討委員会と略)」座長をどなたにお願いするか、検討がはじめられた。その意向が計画内容に大きな影響を与えるので、座長は早めに確定されるのが望ましい。

第3ステップ
−環境の現況調査と課題整理を進める(1996年6月〜1997年1月)

 半年近くの準備を経て、いよいよ現況調査の開始である。その概略は、次の通り。

  • ぎふ環境クラブ
     平成8年11月まで、メンバーが5班に分かれ、班ごとに自分たちでテーマを決め活動した。事務局は要求された資料の提供、提案づくりへの助言、一般市民や庁内関係各課向けの「ぎふ環境クラブつうしん」(ニュースレター)の編集といったサポートに徹した。
     各班でまとめられた意見は、11月の「ぎふ環境フォーラム」の場で市民に発表された。
  • 岐阜市環境行政推進会議(部会)
     各班とも3〜4回の会合が持たれた。毎回、当社研究員がファシリテーター(ワークショップの進行役)を担い、メンバーの意見をその場で分類・整理していった。全日程終了後には、事務局で議論の要旨を取りまとめ、推進会議本体で内容の了承を得た。
  • 環境の現況調査
     主に市でまとめられたデータ・施策・行政計画を活用し、人口・土地利用・産業構造・みどり・水環境・廃棄物・エネルギー消費等々広範に整理・分析作業を進めたが、市の計画が岐阜県の環境行政の方向と整合するよう、県の資料も重点的に文献調査した。
第4ステップ
−検討委員会での計画の内容検討(1997年2〜8月)

 検討委員会は、座長(盛岡通・大阪大教授)を含む3人の学識者、庁内環境関係部の部長3名などに、市の環境行政諮問機関である「岐阜市環境審議会」の企画部会員(7名)、環境クラブ各班代表1名ずつが加わり平成9年2月に発足された。第1回では、環境クラブや推進会議部会の調査結果報告を受け計画で重視すべき課題が話し合われた。第2回目以降は、事務局案をもとに計画の理念・目標・施策・推進体制が議論された。委員会に提出される案は、毎回事前に開催される推進会議での検討を経て決定された。

 なお、委員会の開催スケジュールが全5回と限られていたため、事務局では、各委員からの個別意見の聴取や、環境クラブメンバーが呼びかけた学習会に参加して意見を聴くことを適宜実施し、事務局案づくりにおいても幅広い意見の反映に努めた。

第5ステップ
−計画の素案を公表し、最終決定(1997年10〜11月)

 環境基本計画を策定したほとんどの自治体では、いったん素案を市民に公表し、それに対する意見を公募する過程を取り入れている。岐阜市でも、8月の第4 回委員会で承認された素案を、担当窓口が全文コピーして配布したほか、市広報への概要掲載、市ホームページでの全文掲載などによって10月に公表し、あわせて意見を募集した。

 それ以外にも、市民からの意見聴取の一環として「意見交換会」が2回開かれ、参加した市民と市環境保全課長との間で、環境行政の現状をめぐり闊達に意見が交わされた。

 寄せられた意見を参考にして内容が再調整されたのち、11月の第5回検討委員会に計画最終案が提出され、討議を経て承認された。

今後の策定のために
−計画の実効性をどう高めるか

 さまざまな分野を網羅する環境基本計画に対しては、「環境関連施策を体系化しただけで、所詮は絵に描いた餅だ」との辛辣な評価も見受けられる。

 したがって、今後つくられる計画では、計画推進を担保するしくみの構築が求められよう。その一つが岐阜市の「環境ものさし」であるが、個々の自治体で工夫し、ISO14001の取得をはじめ、環境の状況や施策の進捗を点検する体制づくりが必要である。住民・事業者・行政の協働を促すには、重点課題での数値目標の設定も欠かせないだろう。