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国・地域における環境計画の成り立ちと課題

研究員 佐藤 健明

環境基本計画の策定経緯

 平成5年(1993年)11月の環境基本法の制定を受け、翌平成6年(1994年)12月に、法律に基づく環境分野の基本的な行政計画(=環境基本計画)が初めて閣議決定されました。

 日本最初の環境基本計画は、環境基本計画第15条に基づき、平成6年1月に内閣総理大臣から中央環境審議会に「環境基本計画について」諮問がなされ、関係省庁・関係団体へのヒアリング、部会・委員会での審議、全国でのヒアリング、パブリックコメントの受け付け等を通じて検討がなされ、閣議決定に至りました。

 環境基本法第15条には、「政府は環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画を定めなければならない」と規定されています。

環境基本計画策定の背景−環境計画の必要性

 環境基本法制定以前は、「公害対策基本法」「自然環境保全法」に基づき、環境基準の達成・公害の防止、自然環境の保全に向けた取組みが行われ、相当程度の成果をあげてきました。しかし昭和60年代以降、経済成長や大量生産・大量消費・大量廃棄の生活様式の定着などを背景として、特に大都市における自動車等の集中に伴う大気汚染や主に生活排水による水質汚濁といった「都市・生活型公害」が進行し、廃棄物の増大も大きな問題となりました。また、都市への急速な人口集中に伴い、都市における身近な自然の減少、地方を中心とした農地、森林の荒廃といった問題が発生しました。また、地球温暖化をはじめ、地球全体に影響を及ぼす問題や世界各地で進行する問題が顕在化してきました。

 これらの問題の特徴は地球的規模という空間的広がりと、将来世代にも渡る時間的広がりをもっていること、そしてあらゆる人が関わる通常の経済活動や日常生活が原因となって引き起こされている点にあります。

 このような問題に対処するためには、個々の汚染物質排出や開発行為の規制等の個別対策だけでなく、「環境」を総合的に捉え、社会全体システムやライフスタイルを環境保全型に変革していくことが必要となりました。

 このような背景を受けて、環境への負荷の少ない持続可能な社会に向けて、長期的視野に立って総合的・計画的に施策を進めるとともに、他の地域や諸外国との広域的・国際的連携のもとに対策を実施していくために制定された法律が「環境基本法」であり、政府の取り組みの方向を示し、地方公共団体・事業者・国民のあらゆる主体の自主的・積極的な取組みを効果的に促すための役割を担うのが「環境基本計画」であるといえます。

環境基本計画に盛り込まれた内容

 平成6年に策定された環境基本計画では、環境基本法の理念を受け、環境政策の基本方針の中で、計画の全般に渡る基本的な考え方、問題認識を明らかにした後に、長期的な目標として「循環」「共生」「参加」「国際的取組」を提示するとともに、循環・共生に向けた取り組みの方向、すべての主体の参加の実現に向けた各主体の役割・行動の促進手法、環境保全にかかる共通的基盤施策、国際的取組み、計画の推進体制等について記述し、環境保全に関する施策の総合的かつ計画的展開を図ることとしています。

新たな環境基本計画の策定

 計画策定後、この計画の目指す環境政策の方向に即した進展が図られ、同時に循環・共生・参加・国際的取組の考え方が社会に浸透してきました。しかし、一方でこれらの考え方を具体的行動として社会に展開していく方策を実効性のある形で提示できなかったことなどが指摘されてきました。

 そこで「理念から実行への展開」と「点検体制を強化し、実効性のある計画とすること」が特に重視され、平成12年12月に新たな環境基本計画が閣議決定されました。

 この中で、地球温暖化対策などの重点的に取り組むべき11の戦略的プログラムを記述するとともに、環境基本計画を踏まえた環境配慮方針を各府庁ごとに策定することや、政府への環境管理システムの導入を図ることなどが方向づけられています。

地方公共団体における環境計画

 環境基本法や環境基本計画においては、持続可能な社会を築いていくために、地域の自然的社会的条件に応じて、地域における取り組みの目標や方向性を示すこと、各種制度づくりや社会資本整備などの基礎づくり、各主体の行動の促進など、住民・事業者・民間団体や国の関係機関と協力・連携して地域の環境保全施策を総合的・計画的に推進することが期待されています。

 このため、都道府県、政令市、市区町村等によって地域環境計画が策定されてきました。従来は主に都道府県、政令市や比較的大都市で策定されてきましたが、近年、中小都市や町村において策定するケースが増えています。

 地域環境計画を策定済みの市区町村は、平成11年度末現在で231自治体です。以下に策定済み市区町村リストを示します。

これからの地域環境計画の課題

 地域環境計画の課題は、その地域の自然特性や都市化の度合いなどによって異なると考えられます。したがって、ここではそのような特性を越えて総論的に課題と思われるポイントを整理したいと思います。

(1)持続可能な社会を前提とした多様な政策手法の展開

 環境基本法や環境基本計画が持続可能な社会の構築を基本理念に盛りこんでいましたが、地域環境計画では、実際に持続可能な社会を前提としているものはほとんどありませんでした。しかし、環境を健全な状態で保全し、将来世代に引き継いでいくためには、地域においても持続可能な社会を前提とした様々な政策手法の展開が望まれます。

 例えば、環境を無料の財として扱ったり、環境コストを他の社会構成員や将来世代に転嫁することを防ぐために経済的手法の導入が望まれます。そのほかに、人材育成(農林業に携わる人の役割強化も含む)、規制的手法の強化(省エネ、建築基準など)、意思決定過程に環境配慮を織り込む仕組みといった様々な政策手法を地域環境計画に取り入れていく必要があると考えます。

(2)住民・事業者・行政によるパートナーシップのあり方の追求

 現代の環境問題が、私たち国民の日常生活や企業の経済活動と深く結びついていること、農地・里山など人が介入することによって保たれてきた自然が荒廃しつつあることなどから、地域環境計画をたてるにあたっては、住民・事業者を地域の環境保全を担う主体と位置付け、行政とよりよいパートナーシップを結ぶことが不可欠となっています。

 しかし、実際にはより良いパートナーシップの形を求めて苦慮している自治体が多くみられます。計画の策定過程にどのような形で住民参加をとりいれるか、事業者の環境配慮をすすめるにはどうしたらいいか、住民リーダーを育成する方法など、地域の実情に応じて課題やその対処方法は異なるとは思いますが、計画策定から計画運営にかけての、よりよい住民・事業者・行政のパートナーシップのあり方をそれぞれの地域で研究し、実践していくことが求められています。

(3)行政各部局による環境保全施策の推進と連携

 都市生活型公害や地球環境問題、都市のアメニティなど環境問題が広がるとともに、国民のニーズも変化してきた結果、これまで環境担当課が対策を行ってきた主として公害・自然環境分野以外の分野における環境配慮を進める必要性が生じてきました。その代表的な分野の一つに土地利用があげられます。持続可能な土地利用に向けて、環境上適正な都市開発や住宅供給、都市の拡大を適正に管理するための公共政策等が必要となっています。土地利用をはじめ、農林漁業、交通政策といった分野は環境と深い関わりのある分野であり、地域環境計画を策定・運用する際には、これらの担当課と十分に協議し、環境配慮を織り込んでいくことが求められます。その方法としては、ISOの導入による施策の実効性の確保や地域環境計画の内容の関連計画への取り込み、各部門の意思決定システムの調整といったことが考えられますが、より一層の研究が必要です。

(4)計画の進捗状況を適切に評価・点検するための仕組みの確立

 計画をつくり、それを運用していくにあたっては、計画が適切に実行されたかどうか、環境の保全や創造がどの程度進捗したか、適切に評価・点検することが必要です。

 しかし、現状では環境現況のモニタリングは公害関連を中心に、公園・緑地、ごみ・リサイクルなどの分野に限られている自治体が大半で、生態系やエネルギーといった分野についてはほとんどモニタリングがなされていません。したがって、環境問題の広がりにあわせて環境現況のモニタリング体制を見直す必要があるとともに、社会が持続可能な状態にあるかどうかを評価するための環境分野別の指標や総合環境指標を開発する必要があります。 

 また、現状ではモニタリングのための指標も整備されていない状況ですから、持続可能な社会にむけた目標の設定も不十分な状態にあり、目標設定方法の研究を進めることも必要です。