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未来はこれから、繊維リサイクル

研究員補助 堀田 智子

故繊維業界のいま

 100年以上前から、ボロ(古着・古布)や屑繊維(工場などで排出される繊維屑や裁落屑)などを集めて、いまでいうリユース、リサイクルをしてきた歴史ある故繊維業界。その特徴として、故繊維産業は、流通・加工などの用途により業態が多岐に分かれていること、大半が中小企業であることが挙げられる。また、故繊維を資源として考えた場合は、古紙の付随品目として集められ、ボロを扱う業者は古紙問屋から原料を買取ったり、最近では自治体における資源としての収集品目に加えられるなど、主体的な集荷姿勢が取りづらい傾向が挙げられる。古紙や鉄などと違い、発生源にあたるアパレル業界での再生資源の利用がほとんど行われておらず、市場バランスの調整が難しいことも大きな特徴である。

 このような背景の中で、長い歴史と経験を持ち、地道な産業活動を行ってきた故繊維業界が、いま声をあげている。安価な輸入品が大量に販売され、衣料品が使い捨て感覚になりモノとしての寿命が短くなっていること、これまでのフエルトや作業用手袋の主な用途先が、日本の工業の構造的変化などの影響から、需給バランスが急激に崩壊し、故繊維の低価格化が進んでいるためである。

故繊維とは

 再生資源として流通する繊維及び繊維製品全般をまとめた言葉として、最もふさわしいと考えられるのが「故繊維」である。

 故繊維は大きく分けて、家庭・事業所で一度使用された「ボロ」(または古着・古布)と、工場で発生し一度も使用されずに廃棄される「屑繊維(くずせんい)」の2つに大き分けられる。

故繊維とは
故繊維産業の業界構造と各種業態
(1)故繊維産業の各種業態の役割・性格

 故繊維産業の業態は、ほんとうに細かく分かれており、なおかつ、一つの事業者が複数の業態を兼ねていることも見られる。また、地域的な特徴も見られる。例えば、ウエス製造業は全国的に立地しており、反毛製造業の多くは愛知県岡崎市周辺に立地している。それらの背景には、歴史的に故繊維産業の集積による場合と、発生源である紡績工場の立地する土地柄であったりするが、ボロの選別業者は全国的に立地していることから、ぜひ、ご自分の地域にどのような業者がいて、故繊維のリサイクルの状況に、ちょっと興味を持っていただきたいと思う。

【業態の名称】 【業態の役割・性格】
ボロ選別業者 古紙問屋、行政からボロを買取り、中古衣料・ウエス原料・反毛原料に選別・梱包、貿易商社やウエス・反毛等の製造業に販売する。
故繊維貿易商社 ウエスの輸出業務から発達し、中古衣料や屑繊維の輸出をも手がけるようになった。現在では一部これらの製品の輸入も行なっている。中古衣料輸出を専門的に行う業態(中古衣料輸出商社)も存在する。
古着販売業 ボロの内商品価値の高いものを消費者向けに販売する。海外からの輸入品を扱うケースもある。
ウエス製造業 ボロ、屑繊維(一部)のウエス原料をウエスに加工する。国内向けは代理店を通し、輸出は故繊維輸出商社を通して販売する。
反毛製造業 屑繊維、ボロの内反毛原料を加工し反毛を製造する。加工ラインの方式により廻切・ガーネットの2種類に分かれる。反毛はフエルト、手袋・カーペット等用繊維、クッション材等の材料として販売する。
反毛貿易商社 反毛の輸出を主に行なっている商社。ウエス輸出を軸に形成された故繊維貿易商社とは類型が異なる。
繊維屑回収業者 紡績・織布・縫製工場から屑繊維を回収し、種別に梱包する。産業廃棄物処理業の兼業も存在する。
繊維原料商ブローカー 繊維屑回収業者から屑繊維を買取り、反毛製造業や特殊紡績業に原料として販売する。
フエルト製造業 反毛からフエルトを製造し、自動車断熱材、土木資材、カーペット等として販売する。
特殊紡績業 反毛や一部屑繊維(再用綿)から、作業用手袋・カーペット・カーテン・モップ・衣料芯地等の素材となる特殊繊維(特紡糸)を製造する。
精紡・紡毛業 反毛から特殊紡績と同様用途・合成皮革・帆布用の繊維を製造(精紡)したり、毛織用繊維を製造(紡毛)したりする。
作業用手袋製造業 反毛を原料とする繊維から作業用手袋を縫製する。
製綿業 反毛から、クッション・ぬいぐるみ・蒲団等の芯材となる綿を製造する。
(2)流通・加工ルート

 回収・選別の段階ではボロと屑繊維はルートが分かれ、加工段階で合流する。

 ボロは、家庭からは中古衣類、タオル・シーツ・カーテン等の古布類が、事業所では宿泊施設等を中心に古布類や浴衣が、一部事業所からはユニフォーム類が 発生する。家庭系のボロは集団回収や自治体の分別収集で古紙と同時に排出され、古紙回収業者を通じてあるいは古紙問屋によって直接回収される。ボロ選別業 者はボロを古紙問屋から買取るのが一般的であるが、行政が分別収集したボロを直接引取るケースも存在する。事業所で発生するボロはボロ選別業者が直接回収 するのが主だが、廃棄物処理業者が介在するケースもある。ボロは選別業者により中古衣料・ウエス原料・反毛原料等に選別される。

 屑繊維は、紡織・織布・縫製工場から繊維屑回収業者により直接回収され、繊維原料商により集荷され、反毛原料となるのがほとんどである。一部は織布・縫製工場からウエス原料としてボロ選別業者が回収するケースも存在する。

 中古衣料は故繊維貿易商社によってほとんどが輸出される。ウエス原料はウエス製造業者によりウエス(工業用雑巾)に加工される。反毛原料は反毛製造業者 により反毛(原料繊維)に加工され、フエルト、特紡糸、綿等多様な二次用途に使用される。

故繊維産業の業界構造と各種業態
未来はこれから、繊維リサイクル

 いま、故繊維業界自身も変わろうとしている。国が、改正リサイクル法やグリーン購入法など循環型社会へ向けた法整備を進める中で、故繊維業界全体ですでに取組んでいる自治体へのリサイクル不能品の2割返却運動、故繊維リサイクルの研究や、今後の施策として、アパレル産業界に代表される繊維産業全体での問題解決への呼びかけや、再生繊維製品の開発など需要の創造も考えている。

 本年3月に行われた「第5回全国とことん討論会(『第11回全国「リサイクルの日」シンポジウム』)」の分科会において、故繊維業界、アパレル業界、自治体の担当者を中心に、故繊維リサイクルについて活発な議論が展開された。その分科会の出席者は、故繊維業者はもちろんのこと、地域の環境問題への取組みに日常的に活発な方が多く、故繊維におけるこの後の問題点、それぞれの立場で解決できる課題の整理などが行われた。

 しかし、今後、故繊維のリサイクルが社会的にどのような形で認知され、解決されていくのかは、まだ多くのステップが必要であり、時間を費やすことは間違いない。問題を抱えているのは故繊維のリサイクルだけではないが、社会全体での取組みが必要ではないだろうか。