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区民・事業者主体の環境配慮行動指針づくり

研究員 藤田 陽子

 東京都台東区では平成11年度に策定した環境基本計画をうけ、12年度に区民・事業者の環境配慮行動指針「らくらく環境 あなたと私はパートナー」を原案(たたき台)なしの区民参加で作成した。ここでは、その作成過程を示し、大都市郊外部に比べ市民参加の経験が少ないと思われる都心部で模索された区民・事業者・行政の取り組みを紹介したい。

行動指針作成開始までの経緯

 前年度策定された環境基本計画では、区民・事業者を一般公募し、環境に関する学習や意見交換を行う「区民環境サロン」が開催されるなど計画への区民参加が図られてきたが、その中から「サロンをこのまま終わらせるのではなく、区民の環境ネットワークをつくろう」という話が発展した。これをうけ、計画策定過程に盛り込まれていた、環境基本計画の周知・意見交換のためのフォーラム「たいとう環境のつどい」を、サロン参加者や環境に関する活動を行っている既存団体が中心となって企画・運営することとなり、これを契機として区民、各団体をネットワークする「たいとう環境推進ネット」の母体となる会が発足した。

 環境基本計画の実行を区民・事業者の側から推進していくための「環境配慮行動指針」作成においては、これらの機運をできるだけ活かし、区民・事業者主体の指針づくりを進めることを念頭に作業が開始された。

行動指針作成の経緯

 行動指針作成委員会は平成12年7月に発足し、事業者団体からの推薦、環境団体からの推薦、公募委員の計25名により構成された。委員会の長は、環境基本計画策定時の学識者メンバーの一人に依頼した。

 作成委員会は「自然・緑・水」、「ごみ・エネルギー」、「生活環境・まちづくり」の3つの部会に分かれ、部会長、副部会長の世話人を中心に自主運営された。7月、8月の2ヶ月間は、世話人会での調整をはさみながら、各部会ごとにフリートークから始まる自由な討論が行われ、9月からは、各部会からあがってきた提案事項を極力活かす形で世話人会メンバー、その他の委員会メンバーの有志、事務局により素案が作成された。並行して、公園緑地課、清掃リサイクル課等の庁内関係各課との意見交換会を行い、10月からは全体委員会による検討に入った。12月には区民・事業者の「環境フォーラム」、区報での骨子紹介、HPへの素案掲載により一般区民への行動指針の周知、意見交換を行い、その後の委員会での検討項目とした。委員会は全7回、部会・世話人会は延23回行われ、関係各課との意見交換会を合わせて30回以上の議論の場がもたれた。

 このようにして作成された台東区環境配慮行動指針の、作成過程での特徴、行動指針の内容の特徴は以下のとおりである。

作成過程の特徴

 ・区民・事業者が取り組む環境行動指針であり、できるだけ区民・事業者が主体的に指針づくりに関わり、その実行にも取り組んでいってもらいたいという事務局の意図から、行動指針作成にあたっては素案の提示を行わず、3つの部会を設け、司会・書記などの会の運営を部会長等の世話人に委ね、7、8月の2ヶ月は、各部会で自由に議論してもらった。

 ・世話人会には、部会長、副部会長だけでなく、作成委員会メンバーの希望者は全て参加できることとし、環境に関する活動を既に行っているメンバーの知識と経験を活かす事ができた。

・・一方、公募により初めて環境に関する活動に参加するメンバーも大事にしたいという思いから、部会ではフリートークから議論を始めた。

・・指針の構成は、部会から挙がってきた案を極力活かすものとした。文章で環境に関する考え方、理念を表現した案は序章へ、絵で表現したものは最後に全体の将来像として示した。

行動指針の特徴

 ・環境をよくする行動をとるための指針は分かりやすい形で第1章に示し、しかしこの指針をつくる目的は、それだけではなく、これを機会にもっと環境をよくする実際の活動を起こしていくことであろう、という考えから、特に力を入れて進めていきたい区民・事業者のプロジェクトを第2章に示した。

 ・台東区の特徴として事業者、商業者が多い、浅草、上野などには観光客等の来街者が多いことがあり、将来像には「来街者」、「事業者」、「商業者」、「居住者」の4者の立場から「なったらいいね!こんなまち」のイメージを描いた。

 ・この指針を今後一般の区民に広げていかなければならない、という思いから、巻頭には「一緒に始めてみませんか?」の呼びかけ文を入れた。

 ・これを読んで活動を始めたいと思いついた人のために、既存活動団体や情報入手先の連絡先(電話番号、HPアドレス等)を入れた。

 ・○○しましょう、という提案だけでなく、なぜ?という視点を大切にするため、各目標の扉には「なぜ目標を達成しなければならないのでしょうか?」、「目標を達成するとこんな良い効果があります!」といった項目を加えた。

行動指針作成後の動き

 行動指針作成終了後は、以下のような活動が展開されている。

・指針の区民への広報、推進方策については、13年度に「台東区エコアップ推進委員」が立ち上げられ、その中で検討される予定である。

・行動指針作成中に「子ども環境委員会」が立ち上がり、第2章の環境学習プロジェクトが活動を始めている。

・たいとう環境推進ネットでは、月1回の定例会での勉強会、各団体の活動報告、プロジェクトごとの部会等の活動が展開されている。

・お隣の文京区の呼びかけにより、平成13年6月23日に、近隣区交流ディスカッション「みんなでつなごう環境の環(わ)-21世紀のネットワークを考える−」が開催され、たいとう環境推進ネットも台東区の区民団体代表として参加した。このシンポジウムは文京区と隣接する北区、豊島区、荒川区、新宿区、台東区で環境に関する活動を行っている区民、区民団体同士の交流を目的としたもので、秋に予定されている第2回は台東区がホストを務める。区民団体同士が情報を交換し、交流を深め、新しい仲間を増やしていくとともに、近隣区ならではの共通の課題に取り組んでいくことも期待される。

最後に

 最後に、行政計画策定への市民参加が程度の差はあるものの珍しくなくなった今日、その意義として、計画段階からの参加により市民が担う実現施策の実効性が高まること、さらに主体的な参加を経験することによる市民層の育成等が挙げられている。一方、行政計画(マスタープランレベルの)自体の意義としては、各個別施策の体系化、明文化することによる実効性の担保(単年度予算編成の場合は困難と思われるが)等が挙げられている。今後、市民参加による行政計画策定をより意義あるものとしていくためには、「計画」は理念・構想(ビジョン)や指針(ガイドライン)ではなく、時間軸を伴ったプログラムであるという認識を持ち、その実効性により重点を置くこと、また、参加している市民としていない市民、市民の代表として位置づけられている議会、市民からの税金を預かって施策運営を行っている行政との関係の明確化、各自治体に複数存在するマスタープラン各々の位置づけと関係の整理等が課題として挙げられるのではなかろうか。