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リサイクルと生産者責任

代表取締役所長  山本 耕平

1.リサイクル新法と拡大生産者責任

 昨年の5月に「循環型社会形成推進基本法」(循環社会法)が制定され、新法・改正法を含めてリサイクル関連法は8つにも増えました。こうした法制度整備の中で徐々に具体化されつつある考え方が「拡大生産者責任」です。「循環社会法」のなかではその一般的な考え方が示され、「資源有効利用法」(改正リサイクル法)では使用済み製品の事業者回収の規定が設けられています。

 廃棄物対策は「発生する廃棄物をいかに処理するか」という点に重点がおかれてきました。川の流れにたとえると、川下での対策ということになります。焼却施設や埋立処分場を次々整備しても、川上から流れてくるものを制限しなければ問題は解決しません。すなわちモノの製造段階までさかのぼった対策を講じていく必要があります。

 使い捨てを減らして長持ちする製品、リサイクルしやすい製品、ごみになりにくい製品を増やし、自治体任せの処理ではなく市場の経済活動の中で再使用(リユース)や再生利用(リサイクル)の輪が回っていくようにする必要があります。そのためにはモノをつくる企業に、一定の責任を負わせる必要があります。このような考え方を「拡大生産者責任」といいます。

 これまでは、製品の性能や安全性などについて製造事業者の責任が拡大されてきました。製品に欠陥があって事故が起こった場合、かつては消費者がその製品の欠陥を立証しなければ事業者の責任は問われませんでした。これに対して、欠陥がなかったということを事業者自身が立証できないかぎり、事業者に責任があるとされるようになりました。この考え方は「製造物責任」と呼ばれます。製品に対して事業者の責任は格段に大きくなったわけですが、拡大生産者責任というのは製品が廃棄物になったあとまで事業者になんらかの責任を負わせようという考え方です。

2.ドイツと日本の制度の違い

 このような考え方をもっとも早く打ち出したのはドイツだといわれています。ドイツの容器包装政令は、容器包装を使用する事業者に対して容器包装を自ら回収し、リサイクルすることを義務づけました。日本では容器包装の分別収集を自治体が行っていますが、ドイツではDSDという会社が行っています。

 このDSD社は事業者団体などが設立したリサイクル会社で、回収やリサイクルの費用は容器包装を使用する事業者が支払います。事業者が負担した費用は、最終的に価格に上乗せされて消費者が負担するという仕組みになっています。この制度の対象となっている容器包装にはマークが付いており、事業者はマークの使用料を払う形で費用負担をしています。マークの付いた製品にはリサイクル費用が含まれているため、DSDの行う分別収集に出すことができるというわけです。

 わが国では容器包装リサイクル法や家電リサイクル法が、拡大生産者責任を適用した例だと説明されますが、ご承知のように容器包装リサイクル法では事業者の責任はきわめて限定的です。家電リサイクル法は販売店の引き取りと製造事業者に適切なリサイクルを義務づけていますが、処理費用を後払いするという方式であることや買い換えやその店で買ったものしか引取ってもらえない等、消費者にとっては不満が残る内容になっています。

3.拡大生産者責任のねらい

 経済協力開発機構(OECD)がまとめた拡大生産者責任のマニュアルでは、拡大生産者責任の主な機能は「廃棄物処理のための費用又は物理的な責任の全部又は一部を地方自治体及び一般の納税者から生産者に移転すること」と述べています。つまり誰が引き取って処理するかより、事業者がコスト負担するということが重要な点です。コスト負担の責任を事業者に転嫁することによって、事業者はコストを減らす努力をします。処理費を全部価格に転嫁すると製品が売れなくなるかもしれませんから、できるだけコストを下げるために、処理しやすい製品、リサイクルしやすい製品に転換していくことが期待できます。これが拡大生産者責任によって期待されることです。

 こういう観点から見ると、家電リサイクル法は処理費をそのまま消費者から徴収する(それもかなり高額でかつすべてのメーカーが横並びです)という点で、問題があります。

 すべて使用済みの製品は事業者に回収させるのは現実的には不可能ですが、自治体のルートでは適切な処理ができないものや、リサイクルルートができていないものについては、事業者に引き取りを義務づける必要があるでしょう。家電製品やパソコンはそうしたルートができつつあります。他方で既存の回収ルートを活用した方が効率的なものもあります。古紙や故繊維などはそうしたものに含まれるでしょう。家庭の生ごみは衛生維持という観点からやはり自治体が処理すべきものだと考えられます。

 問題はそのコスト負担のあり方です。税金で負担するか、直接ごみを出す人から徴収するか、事業者から徴収するか、それによって損得で動く主体、動きかたが違います。拡大生産者責任の考え方は、事業者にコスト負担させることによって製品の作り方、売り方を変えさせようということですから、現実に廃棄物として処理が困難なものやリサイクルしにくいものに適用することが妥当だと考えられます。

4.古紙リサイクルと拡大生産者責任

 そこで古紙のことを考えてみましょう。古紙は古くから民間のリサイクルルートが確立して、それを生業とする人たちも大勢います。つまり社会的なシステムが確立しているということです。このシステムが古紙価格の低落によって、現在はきわめて不安定になっています。価格が低落している原因は、自治体の古紙分別収集だという指摘があります。それも一因ですが、もっと根本的な要因として、紙の作りすぎ、使いすぎということも指摘されなければならないと思います。製品の供給が増えているから発生が増え、発生が増えるから自治体はやむなくいろいろな手だてを講じて回収する。結果として古紙回収量が増えて価格が下がるという悪循環に陥っています。

 紙のリサイクルを適正な水準にするためには、生産量・消費量と回収量が均衡するような方策を講じる必要があります。今、古紙をどれくらい使うかは製紙メーカーの裁量ですが、生産量に対して古紙利用量を義務づけるといった方策が考えられます。

 またリサイクルコストを事業者に負担させるということも考えられます。つまり一定の価格以上での買い取りを義務づけるわけです。事業者が負担しきれない場合は、価格に転嫁されて消費者が負担することになりますから生産量は減少し、生産と回収の均衡に寄与することになります。あるいは、あらかじめ生産量に応じて課徴金を徴収しておき、古紙を使った場合はその量に応じていくらか払い戻しされる。逆に規定の量より多く使った場合は報奨金が支払われる、というような制度も考えられます。規定の量より古紙の利用量が少なかった場合は課徴金をとられてしまうことになるので、古紙を使うインセンティブが生じます。この場合の事業者には製紙メーカーだけでなく新聞、出版社など紙の大量使用事業者も考えられます。

 古紙リサイクルの現状から、事業者が何らの責任を負わないというのはきわめて不合理だと思います。既存の回収システムを活用した効率的な古紙リサイクルを維持していくためには、様々な政策手段の導入を検討すべきではないでしょうか。