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繊維リサイクル元年

主任研究員  小田内 陽太

繊維製品リサイクル懇談会

 本年は繊維製品にとって「リサイクル元年」ともいうべき年である。昨年経済産業省にて繊維製品リサイクル懇談会(委員長・永田勝也早稲田大学理工学部教授)が開催され、アパレル・合成繊維・紡績・繊維輸入の各業界、流通業界、故繊維業界、学識経験者、消費者の代表が参加し、課題と関連業界の取組みの方向性につき検討を行った。国政レベルで繊維製品リサイクルにつき検討がなされたのは今回が初めてであり画期的なことであった。本年はその検討内容が各業界で実施に移される一年目に当る。

繊維製品の消費・廃棄の状況

 繊維製品が素材から消費者の手に渡るまでには、多くの工程・業種を経る。素材生産及び各段階での加工において海外生産が一般的に行われ、平成12年に於いて衣料品の最終製品段階に於いても製品点数の8割強が輸入品の形で供給されている。

 旧・通商産業省が平成8年度に委託実施した「繊維製品リサイクル総合調査」によると平成6年時点で繊維の総消費量は2,287千トンであり、産業廃棄物として256千トン、一般廃棄物として1,456千トンが不用物として排出され、その内1,550千トンが焼却・埋め立て処理されている。産業廃棄物には繊維製品メーカーで発生する繊維屑・裁落等(屑繊維)や流通段階での売れ残り、廃自動車に含まれている繊維等が含まれ、廃棄物処理業者により処理されている。一般廃棄物の大部分は市民がごみとして廃棄し自治体が焼却処理している不用衣料品である。リユース・リサイクルによる資源化量は162千トンに過ぎず、広義のリサイクル率(リユース・リサイクル量/排出量)は約9.5%である。日本化学繊維協会が平成8年に実施した調査に於ける繊維製品の推定リサイクル率も9%と近似値である。

 時系列的なデータが存在しない為、最近時点での廃棄物発生量及びリサイクル率の推移は不明であるが、繊維製品の大半を占める衣料品供給量の増加傾向(図1)及び資源化ルートを担う故繊維業界の最近の景況から廃棄物発生量及びリサイクル率は改善がみられず反って悪化しているものと推察される。

繊維製品リサイクルの難しさ

 他の品目と比較し繊維製品の資源化が進展してこなかった理由は以下の通りである。

@素材複合度の高さ、デザインの多様性、ファッション性

 繊維製品は、風合・強度・機能性を持たせる為混紡・交織することが多く、素材の分離・分解が困難である。デザイン(形状・色等)が多種多様であり、均質の素材を大量にという再生資源の条件に該当しない。また流行があり素材・デザインそのものが変化する面もリサイクルを困難にしている。

A低価格化による衣料ライフサイクルの短縮

 海外生産拡大による衣料全般のコストダウン、低価格衣料品専門の小売チエーンの隆盛等により、衣料が低価格化しライフサイクル(購入から廃棄までの期間)が短縮しつつある。この傾向は経済のデフレ化の中、鎮静の見通しがない。

B繊維産業の複雑な生産・流通構造

 生産・流通構造の複雑さから、各段階の売れ残り品が発生しやすく、産廃増加の原因となっている。また各段階の事業者共に中小企業性が強い為、社会的な役割分担の下でリサイクルシステムを構築しようとしても、コスト負担力の弱さを理由に抵抗が大きく合意の形成が困難である。

Cリサイクル技術上のダウンサイクル性

 繊維製品は、再生使用をすると繊維長が短縮し性能の低下が避けられず、同一製品としての再生(繊維TO繊維)が困難である。その結果、原料となる素材より価値の低い他用途に再生利用の道を求めるしかないダウンサイクル性が強い。

D既存リサイクル用途の成熟・衰退

 現在、年間約25万トンの繊維製品が市場経済ベースで資源化されているが、用途は海外向けの中古衣料分野を除いて軒並み成熟あるいは衰退傾向にあり、現状のままでは今後要請されるリサイクル率の向上あるいは繊維製品供給量そのものの増大に対応し得ない。

故繊維業界の歴史と現状

 長年、市場経済ベースで繊維製品の資源化に従事してきたのが故繊維業界である。「故繊維」とは、一度消費者が使用した繊維製品を指す「ボロ」と紡績・織布・縫製等の繊維産業から排出される繊維屑・裁落を指す「屑繊維」を併せた概念である。業界の歴史は古く、明治時代に溯り、業界は選別・加工の段階や用途により多くの業態に分れている(図2)。

 ボロの多くは古紙ルートを通じて回収される。古紙問屋は、集団回収、チリ紙交換、自治体の分別回収等のルートを通じ回収業者から古紙を買上げるが、ボロも随伴品目として同時に集荷される。これをボロ選別業者が買上げ、用途に合わせて選別する。ボロの主な用途は、@輸出中古衣料、Aウエス(油やインク等を拭く工業用の雑巾)、B反毛(フエルト等の原料となる綿状素材)の三つである。選別区分の体系や数は業者によって異なるが、大体百数十に及ぶ。ボロ選別業者は集荷した故繊維を在庫する問屋機能を持ち市場の調整弁としても機能している。

 ボロと並ぶもう一つの故繊維である屑繊維は、繊維動脈産業の各工場に出入りする専門の回収業者により回収され、それを主用途である反毛製造業・同ユーザーが集積する愛知県岡崎や泉南(大阪南部・和歌山北部)の繊維原料商が集荷する構造となっている。

故繊維の用途別需要動向

 故繊維の三用途の内、最近30年程量的に一貫して伸びているのは輸出中古衣料である。中古衣料はボロ選別業者から買付けを行う専門の貿易商社により、東南アジア、南アジアに輸出されている。これらの国では社会の所得格差が大きく、安価な中古衣料に対する需要がある。現状、仕向地が熱帯である為冬物が売れない点、大きな潜在需要を抱える中国、インドネシアが実質的な禁輸措置をとって居る点がネックとなっている。実需ベースでは未だ量的な成長が見込める分野であるが、アジア通貨危機以降値崩れが生じ、品目により価格水準が以前と比べて格段に下がり業界の収益を圧迫している。

 ウエス用途は、機械工業全般や自動車整備、印刷等にとって必需品であり、日本全体に製造・供給業者が存在するが、製造業の生産拠点海外移転、大企業の廃棄物削減志向によるレンタルウエス(新品の布から作ったウエスを回収し薬液で洗浄し再使用するもの)への代替等により、需要全体が伸び悩んでいる。

 反毛用途は、フエルト、詰め綿、特紡糸、紡毛等多くの一次用途に分れ、更にフエルトは自動車用断熱材、カーペット、土木・産業用資材等、特紡糸は作業用手袋等の二次用途に分れる。これらの製造業の多く岡崎や泉南に立地している。この内、需要量上大きな受皿となってきたのがフエルトと作業用手袋であった。近年、フエルト用途ではエンドユーザーである自動車業界で「リサイクルし易い素材への転換」を名目に合成樹脂系フエルトへの代替が進行、作業用手袋用途でも安価な輸入物(中国製)の流入で需要が減少、反毛用途そのものの需要規模を大きく縮小させた。

 以上三用途はそれぞれ問題を抱え、各分野業者の収益は圧迫されて居るが、発生したボロを在庫し各用途分野に選別・出荷するボロ選別業者も、長期的に増加傾向にある集荷量と用途別の需要量減少や価格低下の狭間で、経営は厳しさを増している。最も大きな問題は資源化不能なボロの増加である。従来海外向けの中古衣料用途で買い手の付かない毛織物等の冬物衣料や合成繊維製品は反毛の原料として使用されてきたが、反毛用途の需要減少により、技術的には資源化できるが市場経済ベースで資源化できないボロが大量発生し、廃棄物として処理せざるをえなくなっている。

 日本繊維屑輸出組合ではこのような業界状況を打開する為、昨平成12年、業界ビジョンを策定、事業革新戦略(新商品・用途技術の開発、規格化による競争力強化等)や社会への提言(繊維動脈産業の再商品化コスト負担を軸としたルール作り)に関して検討を行った。

動脈産業による取組み

 平成9年以降、繊維動脈業界も資源化システム構築に向け取組みを開始した。取組みは、@易リサイクル設計(リサイクルのしやすさを考慮した製品設計)、A衣料品リサイクルシステム、B他用途の技術開発、の三つに分けられる。

@は東レ、帝人等合成繊維メーカーによって取組まれ、単一の合成繊維で製造したファッション・制服(識別マークを付ける)、カーペット基布等のシリーズ投入であり、資源化手法としてはマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルを想定している。

Aはポリエステルや羊毛製品を対象に、アパレルを始めとした各製造業界、専門量販店が提携、量販店の店頭で回収した繊維製品をケミカルリサイクル(ポリエステルの場合)あるいは既存の故繊維と同じ用途でマテリアルリサイクル(毛織の場合)するものである。代表的なものに、東レ、アオキインターナショナルによるエコログネットワーク、帝人を中心にしたエコサークル、毛織メーカー3社と青山、ハルヤマ商事等によるエコネットワーク等がある。実績は各システム共に年間数百トンレベルで伸び悩んでいる。回収を量販店の無料下取りセールと絡めた事による運営経費増、故繊維業界と同じ用途分野にスポット的な転売を行った為に生じた故繊維相場の混乱等問題も発生している。

Bは日本化学繊維協会による研究事業で、RDF(固形燃料化)パイロットプラント、屑繊維のセメントキルンの補助燃料や高炉還元剤等としての使用可能性検討等サーマルリサイクルに関するものである。

 以上は個別メーカーや企業グループによる取組みだが、昨年からは繊維動脈産業全体が連携しリサイクルシステムを構築するプロジェクトが始動した。これは平成12年度、日本アパレル産業協会が、社会要請に対応する為に繊維動脈各業界の代表の参加を求めて開催した「アパレル・リサイクル検討委員会」の結論に基づくもので、同時に経済産業省報告書に答える動脈産業側からのアクション・プランともいえるものである。

 システムはアパレルリサイクルネットワーク(ARN)と仮称され、易リサイクル設計製品の基準と認定マーク制度の確立、認定マーク利用事業者からの徴集した利用料による不用繊維製品回収・再商品化システムの構築が骨子となっている(図3参照)。そして同システムの導入により日本の繊維製品リサイクル率を現在の10%前後から2倍の20%にすることをめざすとしている。

 同システムは動脈産業の費用負担により全業界的なシステムを構築しようというものだが、企業の参加がボランタリーである点、従来の故繊維市場との整合性がまだ不明な点、発生量の増大に対応すべき新用途開拓について明確な方向性が打ち出されていない点等課題が多く、回収率向上に実効性のあるシステムを構築できるかどうかは未知数である。

自治体・市民と繊維製品リサイクル

 従来、自治体の資源化行政と故繊維の関わりは、古紙が分別収集される場合に限り併せて回収されるケースが大半であった。また古紙が過去数次にわたる価格低迷で回収機構が麻痺し、業者による補助金要請や買い止め要請が自治体に寄せられたような問題は起こらなかった。

 ところが近年故繊維市場の需要低迷の中、従来は反毛原料として流れていたが現時点では資源化できないボロが激増、関東を中心にボロ選別業者が自治体からの買取りボロの一部につき返却を要請する(返却運動)という事態が起きている。昨12年以来故繊維業界の地域組合の連合体である全国ウエイスト連合会では、要請書を作り、買取りボロの20%返却を自治体に訴えている。

 自治体の対応は分れ、返却分を住民排出の一般廃棄物と認め返却を認めるケース(返却受入の方針や量に関しては様々)と一端買取ったボロは選別業者の所有物とし事業系一般廃棄物あるいは産業廃棄物とし返却を認めないケースが生じている。故繊維業界の認識は、返却ボロは繊維製品のリサイクル技術の性格上、市民や自治体が分別できない無価物(つまり一般廃棄物)を引取っているというものである。

 ここに繊維製品リサイクルの難しさが端的に表れている。缶や古紙は、問屋で若干の異物を除去すれば、市民が排出した段階での分別区分のまま再生資源市場で流通する。しかしボロは、選別業者段階で中古衣料、ウエス、反毛向けの百数十にわたる区分に分けられ、各区分の商品価値は近年急激に変動している。自治体が市民に対し、数ヶ月や1年単位で変化する不能品指定に対応し商品価値があるもののみを分別するよう指導することは実際上困難である。

 また故繊維業界による返却運動に際し注目されたのが市民の意識である。市民と直接触れ合う機会の多い関東のボロ選別業者(複数)によると、返却ボロが自治体の清掃工場で焼却処理されることに対し、リサイクルやごみ問題に関心のある市民ほど抵抗感を持っている。市民の排出するボロのほとんどは衣料である。衣料は自分が直接身にまとっていたものだけに、不用物となって排出する場合も、「大切にしてもらいたい」という思い入れが他の再生資源以上に強く、焼却処理することに抵抗があるらしい。

 しかし焼却にマイナスイメージを持つ市民でも、故繊維の最終用途や需要動向についてはほとんど知らないという。不用なボロを自分が排出した後、それがどのように加工され自分がどのように使用するのかイメージすることがなく、「繊維TO繊維」の困難性についてもあまり認識されていない。「使って初めてリサイクル」という認識は、古紙などの分野では根付いてきたが、繊維製品については未確立の観が強い。市民も低価格衣料を消耗品のように消費しながら、排出する時だけ「燃やすのはもったいない」と感ずる矛盾に気づき、環境的・経済的・技術的にも合理的なシステムは何かと考えるべき時にきている。

今後の展開

経済産業省繊維製品リサイクル懇談会報告書は、以下のような取組み方針を提示した。

<短期的な取組み>
  • @リデユースの推進
    屑繊維の減量化・再生利用、各段階のメーカーや流通業の情報技術活用による実需対応型生産・販売体系の確立
  • Aリユースの推進
    中古衣料販売業者の水平連携や故繊維業者との垂直連携、消費者PRによる国内中古衣料市場の活性化、故繊維輸出商社の海外市場マーケティング力の強化
  • Bリサイクルの推進
    再生繊維の新用途技術及び新商品開発・認定マーク制度・メーカーの再生繊維利用比率の目標値設定、易リサイクル設計・認定マーク制度・生産販売目標値の設定、故繊維業者と自治体、メーカーと流通業及び故繊維業者の協力による回収・再商品化ルートの構築、サーマルリサイクルに対する理解の増進
<中長期的な取組み>
  •  コストを含めた関係者の役割分担へのコンセンサス作り、リサイクル配慮製品(素材を削減したもの)及び再生繊維使用製品の生産・販売に関するルール作り、回収・再商品化に関するルール作り

 同報告書は、役割分担を消費者をも含めた関係主体全体が担うシステム構築について必要性を認めながらも、繊維製品故のリサイクルの難しさから法制化による達成には疑問を呈している。

 一方、国会内の超党派議員で組織する「リサイクル議員懇談会」も昨年「繊維リサイクル小委員会」を設置、議員立法をめざしてヒアリングを開始した。関係業界や消費者の実態を踏まえない早急な立法は現場に混乱を生む。しかし技術的な難しさや業界構造の複雑さを理由とした取組みの遅延が予想される当テーマにとって、立法府内で法制化をめざす動きが出てきたことは、問題解決に向けて大きな推進力となることが期待される。

自治体施策の方向性

 以上のような繊維製品リサイクルの現状と見通しを踏まえれば、当面自治体が取組む施策の方向性も従来とは異なったものになるだろう。

 先ず必要なのは正しい情報の整理・提供である。繊維製品のライフサイクル、リサイクル技術上のダウンサイクル性、故繊維の用途等について、自治体担当者自身が情報を整理する必要がある。そして市民が低価格衣料の氾濫に惑わされることなく環境的・経済的・技術的な視点をもって適切な行動がとれるよう理解増進の為の情報提供を行うべきである。

 次に地域での衣料リユースの推進が挙げられる。従来自治体が取組んできたフリーマーケット以外に、市民にとってより日常的な消費行動としてリユースを定着させる為、域内のリサイクルショップや中古衣料販売店に関するアクセス情報の整備・提供等を図るといった施策が考えられる。

 自治体が故繊維を分別収集する場合に於ける故繊維業者との協力関係構築も課題となる。不能物の発生に対応する為、不能物の処理コスト負担を契約条件で明確化する、自治体が選別ヤードを開設しボロ選別業者に業務委託し選別済みの有価分のみを売却する、等の工夫も必要であろう。

 また、繊維製品の再生使用を推進するグリーン調達的観点から、域内で分別回収されたボロを原料とした反毛製品や再生繊維製品を積極的に購入することも有意義であろう。具体的には現業部門で使用する作業用手袋や備蓄用の防災毛布等が挙げられる。このような取組みをPRすることで市民に再生繊維を身近に感じてもらい、今後市場に出てくるであろう再生繊維使用製品への理解を深めることができよう。

<参考文献>

  • 「経済産業省繊維製品リサイクル懇談会報告書」(平成13年、経済産業省)
  • 「経済産業省委託事業・繊維製品リサイクル総合調査報告書」(平成9年、三菱総合研究所)
  • 「故繊維輸出産業の将来ビジョン」(平成13年、日本繊維屑輸出組合)
  • 「アパレル製品のリサイクル推進に向けた調査・研究事業報告書」(平成13年、日本アパレル産業協会)
  • 「データブック・繊維リサイクル問題の全てが判る!」(平成13年、日本繊維屑輸出組合)