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廃棄物政策はどう変わるか

代表取締役所長  山本 耕平

1.パッチワーク的な現行体系

 廃棄物処理法改正の議論がいよいよ高まってきた。循環型社会形成推進基本法をはじめとするリサイクル関連法の施行、地方分権や規制改革など国と地方、官と民の役割や責任分担の見直し、市場経済と環境の調和を目指した先進国の環境政策の潮流など、廃棄物行政を取り巻く状況は大きく変化しており、廃棄物法制の抜本的な見直しを求める声が高まってきている。

 廃棄物・リサイクル制度の基本問題について検討を行ってきた中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会は、平成14 年3 月22 日に中間取りまとめ(中間まとめ)を行い公表した 。@

 中間まとめでは、「豊島事件に象徴される『リサイクル名目』の不適正処理を防止し、国民の信頼が得られる健全なリサイクル産業を育成するため、『規制は厳格に、手続きは合理的に』という考え方に基づき、リサイクルの推進と適正処理の確保が両立できる制度の確立」を目指したと述べ、@廃棄物の定義の見直し、A廃棄物の区分の見直し、B廃棄物処理業、廃棄物処理施設の設置規制の見直し、C廃棄物対策における排出者責任と生産者責任の見直し、の四つの点から制度改革の検討方向を示している。

 廃棄物・リサイクルに関する法律は、主要なものだけでも現在7つある。平成12年5月の国会は循環国会ともいわれ、2000年は循環型社会元年といわれた。それまでは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃掃法)、「再生資源の利用の促進に関する法律」(リサイクル法)、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容リ法)、「特定家庭用機器再商品化法」(家電リサイクル法)の4つの法律だったが、上位法として「循環型社会形成推進基本法」(循環法)が制定され、リサイクル法は「資源の有効な利用の促進に関する法律」に大幅に改正された。また個別法として「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法)が制定された。現在は「自動車リサイクル法」の制定が間近である。

 これだけの法律があるが、法体系としては統一性、一貫性がとれていない。たとえば、容リ法、家電リサイクル法は、「拡大生産者責任」(EPR=Extended Producer Responsibility)の日本的な適用の例であるといわれるが、容リ法では生産者の責任は市町村が分別収集したものを引き取るだけであり、収集コストは税金でまかなわれる。これに対して、家電リサイクル法では消費者が処理費を負担しメーカーがリサイクルする義務を負うことになっている。また家電リサイクル法は、法律の正式名称のとおり、当初は家電製品以外の家具なども視野に入れていたと思われるが、家電にもっとも近いパソコンは改正リサイクル法のなかで対応することとなった。リサイクル法では、事業者の「自主回収」という規定になり、回収方法や費用の徴収方法はメーカーにすべて任される。

 また、個別リサイクル法によって回収される使用済みの製品も廃棄物であるため、廃掃法の規制がかかる。廃掃法の規制を受けると、一々リサイクル目的のものを運んだり積み替えたりするのに許可が必要ということになり、物流がスムーズにいかない。そのために各法律に廃掃法の適用除外規定を設けるなど、法律全体の整合がとれなくなってきているのである。

 対策を講じる必要があるものについて個々に法律を整備していくというのは、省庁の縦割りや縄張り争いにも起因するところであろう。しばしば先進例として引用されるドイツは、循環経済法によって市場経済活動と廃棄物の抑制、リサイクルの促進を融和させるという考え方が一貫している。わが国の循環法では資源と廃棄物を一元的に扱うような制度化が望まれたが、廃掃法とリサイクル関連法を統合するような実体的な規定は乏しい。そのため循環法すらパッチワークのつぎ布のひとつになってしまった感がある。

 中環審が検討の俎上にあげたのは、まさにこのような状況を改革する必要性があったからであるが、はたして自治体にとって望ましい改革の方向に向かうのであろうか。

2.廃棄物の定義の見直し

 廃棄物・リサイクル制度のもっとも根幹に関わる問題として、廃棄物をどう定義するかということがある。

 最初の廃棄物関係法は、明治33年(1900年)に制定された「汚物掃除法」である。この法律以降家庭ごみの収集・処理は市町村の固有事務と位置づけられる。汚物掃除法の施行から半世紀以上たった昭和29年(1954年)に、ようやく「清掃法」が制定された。第1条では「この法律は汚物を衛生的に処理し、生活環境を清潔にすることにより、公衆衛生の向上を図ることを目的とする」とその目的を掲げ、ごみ処理は市町村の責務であること、清掃区域を定めて計画的にごみの収集、処理を行うことが定められた。

 汚物掃除法、清掃法ともに、法律の目的は清潔の保持すなわち公衆衛生の観点から「汚物」を処理することであった。(ちなみに汚物とは屎尿とごみであり、廃棄物という言葉はこのあとの廃掃法から使われるようになる。)

 しかし、戦後の復興から高度成長時代に向かうなかで、汚物という概念ではとらえられないごみが増え、公害の原因ともなってくる。工場から排出されるさまざまなごみについては、規制する十分な制度が確立していなかった。そのために昭和40年代のはじめ頃から自治体から清掃法改正の声が高まり、昭和45年(1970年)のいわゆる公害国会において、他の公害関係法とともに「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が制定され、廃棄物処理体系が本格的に整備されるようになった。廃掃法では公衆衛生という観点に加えて、廃棄物による公害の防止、環境保全が法律の目的として規定された。

 廃棄物処理は当初は民営で行われ、大正時代から大都市を中心に直営事業に移行してくる。都市の公衆衛生維持が重要になってきたからである。廃掃法以降は公害防止という観点から処理施設の整備が図られ、市民サービスの向上という観点から収集体制も拡充されていった。

 廃掃法では汚物という概念にかわって、廃棄物という概念を導入した。廃棄物とは「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。」(第2条)と定義されている。ごみや汚物というものについての定義はないが、いずれも生活環境保全のために規制していかなければならない不要物という観点で定義されたものである。

 言い換えれば、廃掃法では廃棄物をできるだけ広くとらえ、それらを規制していくことで環境汚染を防止しようとしたのである。後述するように市町村の処理責任が強調され、廃棄物処理事業が拡充されていったのも、こうした観点からである。

 一方、廃棄物を環境汚染の元とみなして規制されると、古紙や鉄くずなどの資源回収を生業としてきた人たちにとっては商売がやりにくくなるため、「専ら再生利用の目的となる」廃棄物(これを「もっぱら物」と呼ぶ)のみの収集運搬を業として行うものは廃棄物処理業の許可を要しないという例外規定をもうけた。この例外規定が、その後いろいろ問題となる。もっぱら物と廃棄物の区別は、厚生省の通達によってそれが有償で取り引きされるか否かによって決まるとされたため、10トン車1杯の廃棄物を1円で買い、別の名目で処理費をとるといった脱法行為が行われるようになった。豊島に累積した産廃はそのような形で「資源」として集められたものである。極論すれば、これは資源だと言い張れば、規制することはなかなか難しいというのが現実である。

 逆に、バブル以降、再生資源の価格が低落して、古紙なども「逆有償」でないと古紙業者は回収できなくなった。逆有償ということは処理費をとるということであるから、古紙は廃棄物になり、廃掃法の規制対象となる。古紙問屋のヤードは廃棄物処理施設になり、新設するためには都市計画決定やアセスメントの手続きが必要になる。実際はこのあたりは柔軟に運用されているようであるが、再生資源業者の多くは少なくとも収集運搬業の許可を取得せざるを得なくなっている。

 廃車のスクラップやタイヤが山積みされていても、これは資源だといわれれば、自治体は規制することができず、火災などの事故が現実に起こっている。(廃タイヤについては、再利用のための契約が行われないまま180日以上野積みされている場合は、廃棄物として処分しているとみなして厳正に対処せよという通達を出しているが、一々国が廃棄物かどうかについて通達を出すという状況がおかしい。)

 こうした状況をふまえて、循環法ではリサイクル可能なものも含めて包括的に「廃棄物等」と規定し、リサイクルするものは「循環資源」という新たな定義をもうけている。中間まとめでも同様に、できるだけ広く廃棄物を定義し規制対象とすること、占有者の主観ではなく客観的に判断できる基準をもうけることが望ましいとしている。一方、リサイクルを産業として育成したい経済産業省や産業界は、リサイクル可能物は廃棄物としての規制をはずし、自由な取引環境を形成すべきだと主張しており、この点については廃棄物処理法のもとで規制を合理化すべしという方向を示している。

3.廃棄物の区分

 廃棄物の定義の見直しに加えて、自治体にとって関心の高い問題は廃棄物の区分である。周知のように、廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に区分されている。市町村は一般廃棄物処理計画を定めて、これに従って「その区域内における一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し、及び処分しなければならない。」(第6条の2)と規定され、一般廃棄物は市町村の処理責任と理解されている。

 これに対して、産業廃棄物は公害対策の基本原則である汚染者負担原則(PPP=Polluters Pay Principle)にもとづいて事業者の処理責任を規定しており、都道府県が適正処理が行われるようにその活動を監督するという仕組みになっている。

 ただし産業廃棄物とは「事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物」(第2条)であると定められ、政令で指定する品目を加えても産業廃棄物に指定されているのは19種類だけである。それ以外の事業系の廃棄物は一般廃棄物(事業ごみ)になり、市町村が計画的に処理を行う責任があるということになる。処理施設に余裕のなくなった市町村では、古紙など資源化できるものは受け入れないとか、空き缶や空きびんは「金属くず」「ガラスくず」だから産業廃棄物だ、というような対応をしているところもあるが、市町村にとっては事業ごみに対してどこまで責任を負うべきなのか、議論が分かれるところである。

 中間まとめでは、廃棄物の区分の見直しについて、処理責任に着目した区分として生活系廃棄物、事業系廃棄物に区分するとともに、厳しい規制が必要な有害廃棄物等については別の区分をもうけるという考え方を示しているが、事業系一般廃棄物が産業廃棄物扱いになることに対しては、産業界や廃棄物処理業界から強い反対意見があり、結論に至っていない。しかしこのような区分では、家庭から出るペットボトルは家庭系、オフィスから出たら事業系ということになり、同じものが別の区分となって合理性に欠ける。この区分の考え方は、あくまで家庭系のごみは市町村に処理責任があることを前提に考えられているように思える。

 廃棄物の区分については、すでに全国市長会が具体的な提案を行っているA 。全国市長会では(財)日本都市センターに委託して平成9年度から2カ年にわたり廃棄物対策のあり方について検討を行ったB 。この報告書にもとづいて意見書をまとめ、当時の生活環境審議会にも提出されている。

 市長会提案では、「新たな廃棄物の区分は、排出主体によって行うのではなく、リサイクル可能性や有害性などの性状に応じて客観的な要件によって区分し、それらを処理する主体や責任主体は別に定める方が合理的である。」とし、表のような区分を提案している。

 市長会の提案のポイントは、廃棄物の区分と責任は分けて考えるべきだとしている点である。そして廃棄物を適正に「管理」していくために、市町村責任についての見直しを主張している。

A 再生利用物
  • 再生利用可能・素材回収可能な製品、有機資源として再利用可能なもの、再生利用可能なもの、再生利用を優先させるべきと考えられるもの。
  • 都市自治体は、基盤整備とその管理を行うほか、地域における回収・再資源化のルート確立とその監視、市民や事業者の指導にあたる。
  • 回収・分別・保管に関しては、事業者が責任を負うこととするが、これらを適正なコストを支払って、都市自治体に付託することができることとする。
  • 広域的に取り組むべきものについては、市町村の広域行政体によって行うこととするが、それさえ不可能なものについては、市町村の要請に基づき、都道府県が行うことも可能とする(都道府県管理の可能性)。
  • 行政と民間の共同事業の可能性も考えられる。
B 第一種廃棄物
  • 一般的な公害防止装置を持つ焼却炉や処分場で処分しても環境汚染をもたらさないもの(有機物やリサイクルできない紙屑等)。
  • 上記の内、一般家庭より排出されるものについては、都市自治体が事業主体となるが、その他については、原則として事業者が自らの管理するところとし、都市自治体はその監視・指導の権限を有する。また、事業者は適正なコストを支払って、都市自治体に処理処分を委託することもできる。
C 第二種廃棄物
  • 有害物質を生成する可能性があるため、高度な公害防止装置を備えた中間処理施設や処分場で処理処分する必要がある廃棄物(プラスチック製品、工場等からの産業系廃棄物)。
  • 家庭から排出されるものについて、事業者が回収・処理処分がどうしても不可能ものについては、事業者は適正なコストを支払って、都市自治体に回収・処理処分を委託することもできる。
  • 都市自治体(または市町村の広域行政体)においても困難な場合には、要請と協議に基づいて、都道府県による処理・処分体制を構築することもできることとする(都道府県管理の可能性)。
  • 行政と民間の共同事業の可能性も考えられる。
D 特別管理廃棄物
  • 有毒性や危険性があり、感染症の危険などのため、特別な管理が必要とされるもの(有毒物、医療器具等)。
  • 家庭から排出されるものについて、事業者が回収・処理処分がどうしても不可能ものについては、事業者は適正なコストを支払って、都道府県に回収・処理処分を委託することもできる(都道府県管理の可能性)。
  • 行政と民間の共同事業の可能性も考えられる。

 提案のもととなった都市センター報告書では、「一義的には廃棄物管理の責任は排出者にあることを前提とし、汚染者負担原則にもとづいた費用負担の考え方を明確にすることが必要である。また『事業主体』と『責任主体』を分けて考え、合理的効率的な仕組みを実際に構築し、運営していくことと、分別や費用負担の義務づけなどによって責任をはたすべきことを区別して論じる必要がある。このような考え方に基づいて、事業主体としての自治体の役割を見直す必要がある。」と述べている。

 すなわち、本来は廃棄物に関する第一義的な責任は、廃棄物の発生者・排出者(「責任主体」)にあり、「責任主体」から付託を受けた市町村が「事業主体」として処理しているのであって、市町村が自ら処理事業を行う責任があるわけではないというものである。

 この考えかたにもとづくと、「拡大生産者責任」も生産・流通事業者に責任を押しつけるのではなく、「再生利用物」を適切に回収したり処理する体制を構築する事業主体としての役割という意味での責任の拡大と理解されるのである。

 すなわち、「都市自治体は、『事業主体』として現実に廃棄物の処理を行うのみでなく、地域における廃棄物の発生・排出抑制、リサイクルさらにはまちづくり政策の中での対応などについて広く『廃棄物管理』ともいうべき役割を負う」というのが、市長会の提案である。

4.地方分権と廃棄物政策

 このような廃棄物の定義や区分の見直しが重要な理由は、廃棄物対策が川下対策では対処できなくなっているからである。製品の生産や流通、消費に遡って、発生抑制策やリサイクル促進策を講じていかなければ、市町村がごみの増加を予測して施設整備をしていくというような従来型の政策はもはや破綻しているといってよい。

 廃棄物政策は、画一化、広域化と分権化の間でまだ明確な方向を見いだせないままにある。分権化という観点からは、機関委任事務とされてきた産業廃棄物行政が都道府県の法定受託事務となり、規制・監督の裁量の幅が大きく広がった。三重県では産業廃棄物税が導入され、他の自治体でも導入が検討されている。

 一方で、市町村の一般廃棄物行政はダイオキシン対策の名目の元で、広域処理が進みつつある。国は小規模な処理施設を集約し、連続運転とエネルギー利用が有利な大型施設を広域で利用する方針を打ち出している。容リ法で分別収集が普及すると、分別方法も統一すべきだという意見が出てきている。

 昭和50年代には沼津方式、善通寺方式、平塚方式などと呼ばれたように、きわめてバラエティ豊かなシステムが各地で編み出され、地方自治のショーウィンドーといわれた廃棄物行政は、次第に個性を失うことになるのであろうか。

 40年代後半の「東京ごみ戦争」において、「自区内処理原則」という考え方が示され、各自治体はそれぞれ自分の区域内で処理施設を整備すべきで、よその自治体につけをまわさない、という意味で広く人口に膾炙するようになった。しかしこの自区内処理原則はもはや実態を失いつつある。最終処分場を持たない市町村は多数あり、焼却灰や不燃ごみは各地の民間処分場で処分されている。リサイクルするためには需要のある地域に持っていくことは当然である。生ごみは都市の中だけではリサイクルできない。

 このような現実を考えると、自区内処理という考え方についても見直さなければならない。廃棄物の量は抑制されつつあるものの、質においてはますます多様で、処理が難しくなっている。これを適正に処理するとともに、資源としての有効利用の幅を広げていくためには、市町村事業としての廃棄物処理では限界がある。すでに高炉やセメント炉が廃棄物処理に利用されているように産業設備を活用したり、同じ性状の廃棄物を大量に集めて有効利用するなど、合理的な処理体系を新たに構築していく必要がある。廃棄物の定義や区分の見直しは、こうした方向の中をふまえて行われるべきであろう。

 また、市町村事業を寄せ集めただけの広域化も、遠からず時代の要請に合わなくなる可能性が高い。廃棄物処理の公共性は官だけが担うのではなく、市民、企業を含めた民との連携のなかで、社会全体として担っていくという視点が必要で、市町村や都道府県は社会的な効率性、安全性という観点から民間の事業を支援し、排出者に対しては適切な処理ルートで処理するよう規制や監視を行う役割が求められてくるのである。

 もうひとつの視点は、製造販売事業者との役割や責任のシェアである。たとえばスーパーに対してレジ袋やトレーなどの包装の抑制を働きかけている自治体は多いが、それぞれバラバラに行われている。スーパーとタイアップしていろいろな施策を行っている例も少なくないが、こうした施策を競い合うことではたして全体としての成果はあがっていくのだろうか。むしろ自治体が連携して業界と対峙し、国全体として包装の削減や規制を講じていくという姿勢が必要である。

 以上、わが国の廃棄物政策の課題と見直し論の現在の状況を概説してきたが、まとめとして分権を前提とした自治体廃棄物政策の変化の方向を予想してみたい。

 第一に、都道府県を含む自治体の役割と責務は、廃棄物が適切なルートにのってリサイクルされ、あるいは処分されるよう、規制や監視の体制を整えるという点に重点が置かれるようになるだろう。廃棄物・リサイクル関連法をうまく運用していくためには、政策のウエイトはこうした部門に移すことが必要である。そのためには、自治体にもっと規制権限を与え、体制を整えていく必要がある。

 第二に、廃棄物処理事業は官から民へ移っていくだろう。高度な処理が求められるようになるほど、官営の事業では技術的にも対処できなくなる。ストックされた設備や技術の活用、新たな技術開発によって、効率性の高い処理体系の構築が望まれるようになるだろう。その中には、たとえば農業地域で生ごみを土壌還元したり、工業地域でエネルギーのカスケード利用システムを導入するなど、「地域内循環」という視点からの官民連携型の処理も含まれるかもしれない。こうしたシステムづくりこそが、自治体の個性を競う領域となろう。廃棄物の定義や区分の見直しは、そのきっかけとなるはずである。

 第三に、上記とやや矛盾するが、民間事業への官の関与する部分も増えてくると予想される。つまり官民どちらが事業主体となろうとも、新たな施設の立地はますます困難が伴うことが予想されることと、環境リスクへの配慮、リスクヘッジのための施策が重要になると考えられるからである。廃掃法では公共関与による産廃処理施設を「廃棄物処理センター」として推進していくことを規定している。同時に、都道府県が廃棄物処理事業の主体となることも認めており、実質的にいろいろな経営形態がとれる。自治体は、公設民営や三セク、PFI、処理委託など、多様な形態のなかで適切なシステムを選択していくことになろう。地域ごとに民間活力をどう活かし、官民協働の仕組みをどうつくりあげていくかも、自治体の力量の問われるところとなろう。

 第四に、生産、流通に遡った川上対策を進めていくためには、自治体の協力、連携が重要になるだろう。川上対策は、個別の自治体では、なかなか効果的な政策を打ち出しにくいからである。拡大生産者責任や税・課徴金、デポジット制度など経済的手段の導入などの政策課題については、自治体連携によって早期に具体化を図っていく必要があるが、法律制定過程に適切にコミットしていかなければ容リ法のように期待はずれで市町村負担が増すような改革が行われるとも限らない。

 蛇足ながら、本稿は市町村のごみ処理事業を縮小して効率化せよと述べているわけではない。事業者責任の強化と合理的なリサイクル体系構築という観点から考えた場合、市町村事業の見直しは不可避になってくるだろうと述べているのである。廃棄物問題において、自治体と自治体労働者が果たしてきた役割と、今後も果たすべき役割はきわめて大きい。その役割は、「廃棄物の処理」から「廃棄物の管理」に移ってくるのではないかというのが、筆者の意見である。

  • @「廃棄物・リサイクル制度の基本問題に関する中間とりまとめ」平成14年3月22日中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会
  • A 「廃棄物政策に関する意見」平成11年1月27日全国市長会
  • B 廃棄物に関する都市政策研究会(寄本勝美座長)。最終報告書は日本版の循環経済法の制定が必須であるとの観点から「都市と廃棄物管理に関する提言」(平成11年1月)としてまとめられた。筆者も委員として加わり、報告書の執筆にあたった。