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循環関連法に欠けている分権の視点

代表取締役所長  山本 耕平

1.パッチワーク的な循環関連法の体系

 2000年の第147回国会は「循環国会」ともいわれ、循環型社会形成推進基本法(以下、基本法)や資源有効利用促進法をはじめとする循環関連法が相次いで制定された。2002年に自動車リサイクル法が制定されて、品目別には容器包装廃棄物、廃家電製品、食品廃棄物、建設廃棄物、廃自動車のそれぞれについて法律が整備された。

 上位法としての循環型社会形成推進基本法で循環型社会の基本理念を定め、そのもとに廃棄物処理法と資源有効利用促進法が置かれ、さらに個別法によって回収とリサイクルの仕組みを詳しく規定するという体系が整ったことになる。しかし本来は先に制定されるべき理念法があとにでき、問題になっている対象ごとに固有の制度設計をしたため、政策の統合性、一貫性に欠ける面がある。

 たとえば自治体が求めている使用済み製品に対する事業者の引き取り義務を課しているのは、家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)でテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、資源有効利用促進法でパソコン、二次電池のみで、その他多数の電気製品は依然として自治体が処理しなければならない。またパソコンとテレビとでは回収方法も処理料金の負担の仕方も違う。パソコンは前払い制で、テレビは廃棄時に払う。

 廃棄物を減らすためには、生産段階から配慮する必要がある。事業者にそのことを促すために「拡大生産者責任」(EPR)が重視されている。EPRとは製品の使用済みの後のリサイクルや処理の段階まで、事業者の責任を拡大させるというものである。基本法でもEPRの原則が規定されたが、法律によって事業者の責任の度合いが異なる。

 家電製品やパソコンは事業者が回収、処理までの責務を負うが、自動車はシュレッダーダストやエアバックなど部材の一部を引き取る義務があるだけである。容器包装についてはもっとも負担の大きい回収は市町村の役割となっており、事業者は市町村が集めたものを引き取るだけである。さらに回収されない分のリサイクル費用は負担しなくてもよい。

 本来では、原則としてリサイクルすべきものは市町村の処理からはずし、例外的なものだけ処理するという形が望ましいが、70年に制定された廃棄物行政の枠組みはそのままにして、特定の製品だけを廃棄物処理法の例外的な扱いにしている。逆に言えば、市町村の廃棄物処理を前提にして、例外的に特定の品目を指定してリサイクルさせようとしているため、抜本的な制度改革になっていないのが問題である。各法律が有機的に連携していないことも含めて、いうなればつぎはぎ状態にあるのが、現在の制度の状況であろう。

2.廃棄物処理法の見直しが必要

 循環型社会形成推進基本法が制定される前年に、全国市長会では「廃棄物政策に関する意見」(1)をまとめて生活環境審議会で提言している。この意見書は全国市長会が日本都市センターに委託して設置した「廃棄物に関する都市政策研究委員会」(委員長:寄本勝美早大教授)が2カ年にわたって検討を行ってとりまとめた「都市と廃棄物管理に関する提言」(98、99年度)(2)をもとにしたものである。筆者も委員として参画し、意見書ならびに提言の執筆に関与した。

 この意見書は、まず「発生抑制、リサイクル、適正処理を一元的にとらえ、総合的な廃棄物対策を進めることが強く求められている。そのため、地域の廃棄物処理のみでなく、地球環境の保全と適切な資源消費、物質循環の確立をもめざした「資源循環・廃棄物法」(以下「新法」という。)のような総合的な法律の整備を行うべきである。」と述べている。

 さらに、循環型の社会システムを構築していくためには、一般廃棄物の処理が市町村の責務であるとする考え方に異論を唱え、「廃棄物に関する第一義的な責任は、廃棄物の発生者・排出者(「責任主体」)にあること、費用負担は汚染者負担の原則によるものであることを明らかにするとともに、現実には個々の発生者・排出者によってすべて処理することは、衛生的な処理、環境保全の面で問題が生ずるおそれがあるため、「責任主体」から付託を受けた都市自治体等が「事業主体」として処理する」という考え方を示している。つまり、何でもかんでも排出されたごみを処理しなければならないという責任は市町村にはないのだ、と言っている。

 そしてこのような考え方を前提として、生産・流通事業者の責任を明確にし、「使用済み製品のリサイクルや適正処理に対して資金的物理的責任を含むという『拡大生産者責任』の考え方が具体化される必要がある。」と述べている。

 その上で一般廃棄物と産業廃棄物の定義と区分の見直しが必要であるとし、すべての不要物を包括的にとらえた上で、まず、「リサイクルすべきもの」とそうでないもの(廃棄物)とに区分し、前者を「再生利用物」として定義する。再生利用物は、リサイクルのルート・技術が既に存在している製品と、コストや回収ルートが未整備でもリサイクルさせるべきであると考えられる製品を指定して、EPRの考えに基づいて民間での処理を義務づける。

 それ以外の廃棄物については、通常の処理施設で安全に処分することができる「第一種廃棄物」、有害性が高く特別な管理が必要な「第二種廃棄物」、さらに高度な公害防止装置を有する施設において処分する必要があるものを「特別管理廃棄物」として区分するという、具体的な提案をしている。

 まとめるとこういうことである。使用済み製品を含むあらゆる不要物のうち、ある原則にもとづいて再生利用物を指定する。個別製品ごとではなく原則に基づいて指定するのである。結果、多くの工業製品が再生利用物ということになる。これらは排出者の自己責任(汚染者負担原則)と拡大生産者責任の考え方に基づいて回収ルートを整備し、再生利用する。残ったものが廃棄物で、これを性状や有害性などに応じて区分し、それぞれの廃棄物処理の事業主体は地域の事情に応じて市町村や都道府県、民間業者が担う。こうした制度によって、生産者も排出者も廃棄物に責任を負うことが明確になり、減量・リサイクルのインセンティブが大きく働くことになる。

 基本法では再使用、再生利用する有用な資源を「循環資源」、循環資源と廃棄物を合わせて「廃棄物等」という新たな概念を規定しているものの、循環資源を具体的に定義していないことと、循環資源の回収や処理の責任について規定していない。ここの原則をきちんと定めることが必要である。

3.地域循環と多様な廃棄物処理システム

 意見書では「都市自治体は、「事業主体」として現実に廃棄物の処理を行うのみでなく、地域における廃棄物の発生・排出抑制、リサイクルさらにはまちづくり政策の中での対応などについて広く「廃棄物管理」ともいうべき役割を負うこととなるものである。」と述べている。

 すなわち、都道府県、市町村は地域で発生する廃棄物をトータルに管理する役割を担い、関係する主体がそれぞれきちんと責任や役割を果たしているかどうかを監督する。リサイクルできない廃棄物については、市町村が事業を行う場合もあれば、民間の施設や既存の産業設備を活用しながら循環利用や適正処理が行われるような仕組みを構築する、というようなケースも考えられる。分権的な観点から、まちづくりや地域の産業振興などと関係づけながら、地域独自のシステムを構築し、市町村は市民や関係する主体を調整したり監督する役割を果たすべきである、というのが意見書の趣旨である。換言すれば、自治事務たる廃棄物行政とは単に廃棄物を処理するということではなく、廃棄物が循環型社会にふさわしい利用や処理が行われるよう権能を行使していくことだということである。

 埼玉県日高市(人口約5万4千人)では、年間排出量約1万5千トンのごみを地元の太平洋セメントの工場で全量をセメント資源化している。収集したごみを直接セメント工場に持ち込み、ごみ袋のままごみ資源化キルンに投入し、約3日間好気性発酵させたあとセメントの原燃料としてリサイクルする。日高市では、清掃工場を廃止し、このシステムによって市内の一般廃棄物を処理している。

 このような事例はまだほとんどないが、地域に立地する工場の遊休設備と技術を活用すした廃棄物処理事業の可能性のある地域は少なくないのではないか。地域の産業や自然、人材などいろいろな資源を動員して、地域固有の仕組みをつくりあげるという市町村の力量にも期待するところである。

 生ごみや食品廃棄物については、地域の農業と連携した地域内循環の試みがひろがっている。山形県長井市のレインボープランは著名な例である。生ごみを分別収集して堆肥化し、それを市内の農家が利用して作物を生産し、域内に供給するという仕組みである。堆肥化は焼却処理の代替として市民の関心も高いが、なかなか地域内でうまく活用されている例は少ない。レインボープランでは農業者の努力が大きく、廃棄物問題というより新しい農業の試みとして見る方がふさわしいかもしれない。

 横浜市では、ホテル、百貨店、学校給食などの食品廃棄物を飼料化し、市内農家で利用する動きが広がりつつある。廃棄物処理業者などが協同組合を設立して飼料化施設を建設、集めてきた食品廃棄物は乾燥・脱脂して市内農家に販売し、農家は配合飼料に30〜40%この飼料を混ぜて豚に与える。「はまぽーく」というブランドで市場に供給しており、肉質は上々で評価も高く、ホテルなどで特別な料理に使われ始めている。今年の春からは一部地域で市販されているが、回収体制が整っていないことや生産能力の関係で農家への供給が追いつかず、なかなか入手しにくい状況にある。

 沖縄でも、環境NPOと養豚農家、大学が連携して「くいまーるプロジェクト」と名付けて、食品廃棄物飼料による養豚の事業化が進行中である。

 循環型社会のもっとも理想的な姿は、地域で消費したものを地域で循環利用することである。しかし地域の実情に応じた仕組みや多様性を広げていくためには、許認可や規制の権限をもっと自治体の裁量に委ねる必要がある。循環型社会にも地方分権の発想が必要である。このような視点から、今一歩の改革が求められよう。

4.循環関連法の分権化を!

 もうひとつの視点は、法制度の実効性を担保するために、自治体の権限や裁量を拡充することである。循環関連法は国が一元的に運用する仕組みであるが、負担金を支払わないなど事業者としての責任を免れているいわゆるフリーライダー対策や、事業者の監督業務などにおいて、自治体に権限をゆだねる必要がある。

 家電リサイクル法では、廃家電製品の引き取り等における監督業務は国が直接行うこととなっているが、きめ細かく監視の目を張り巡らすことは現実的に不可能である。しかも監督がいき届かないために不適正処理や不法投棄された場合は、市町村がその後始末をせざるを得ない。しかし法律では、市町村が小売業者への報告徴収や立ち入り検査を行う権限を認めていない。実際、大手家電小売店が消費者からリサイクル料金を徴収しながら、メーカーに引き渡さず、中古家電として輸出して、問題になったケースも出ている。

 また容器包装リサイクル法においても、再商品化委託費を負担すべき特定事業者の監督業務は国が行うこととなっている。特定事業者には大小様々な事業者がいるため、かなりのフリーライダーが存在するものと推定されている。国においてもその対策の強化をはかりつつあるが、制度の実効性を担保するためには都道府県、市町村にも指導の権限を与えるべきであろう。

 食品リサイクル法は減量・再生利用実施義務が課せられる食品関連事業者は、施行令によって食品廃棄物を年間100トン以上排出するものが対象となった。これではかなり規模の大きい事業者しか対象にならない。おまけに実施状況を報告する義務すら規定されていない。つまり該当するこころあたりのある事業者は、20%の減量または資源化をしなければなりませんよ。発生量や資源化量などの記録は保存しておきなさい。農政局や農政事務所が調査に入るかもしれませんよ、という内容である。強制力はほとんどなく、実効性をどのように担保するのか、その手段はまったくもって不明である。

 再生事業者の登録も国が窓口で、登録された業者の名前は都道府県に通知されることになっている。このような業務ははじめから都道府県で行ったほうが、よほど適切な対応ができる。市町村が窓口となっても何ら支障はないはずである。

 食品廃棄物のリサイクルを進めるには、たとえば1日100?以上排出する事業所まで対象にするなど、自治体の実情に応じた上乗せ規制を可能にし、監督や報告徴収業務を自治体の権限とするなど、分権をはかるべきである。

 様々な法律が整備されたというものの、これらの多くは国が直接執行する制度になっており、自治事務として行われている市町村の一般廃棄物行政と一体化がはかられていない。法律の実効性を高め、適切な責任と役割分担をはかっていくためには、これらの法律にも分権の視点を入れていく必要がある。

  1. 廃棄物政策に関する意見(平成11年1月 27日、全国市長会)(平成11年1月27日(水)開催の全国市長会理事・評議員合同会議で決定)
  2. 「都市と廃棄物管理に関する調査研究報告−廃棄物に関する都市政策研究会中間活動報告」(平成9年11月、(財)日本都市センター)、「都市と廃棄物管理に関する調査研究報告−廃棄物に関する都市政策研究会平成9年度報告」(平成10年3月、(財)日本都市センター)