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再評価される集団回収

代表取締役所長  山本 耕平

1.はじめに

 市町村による資源の分別収集(行政回収)の普及によって、集団回収の衰退が懸念されていたが、近年ふたたび集団回収が注目されている。

 かつては集団回収がリサイクルの中心的なシステムであり、行政回収は空き缶やワンウェイびんなど、民間のリサイクル事業としては採算に乗りにくいものを対象として行われていた。いわば行政回収が集団回収を補完する形をとっていたものだが、容器包装リサイクル法の施行によって、容器包装の行政回収が全国的に普及したことと、90年代の再生資源の低落によって、それまでほとんど民間に委ねてきた古紙やボロまで分別収集の対象となり、集団回収のほうが行政回収を補完するシステムとして位置づけられるようになってしまった。

 一方、行政回収は回収品目の拡大によるコストの増加が、市町村の大きな課題になっている。いいかえれば、リサイクルという公共事業の範疇が拡大するにつれ、効率化とコストの削減が課題となってきたということである。そのために集団回収のテコ入れが求められるようになってきた。行政回収を集団回収に移行する動きも出てきている。

 このような集団回収の新たな動向と推進方策を検討するために、平成17年度からスチール缶リサイクル協会と共同で調査研究を行っている。本稿はこの調査研究(以下集団回収調査という)の成果にもとづいたものである。

2.集団回収の変遷

 もともと、わが国は民間による再生資源の回収・流通ルートが発達してきた。末端の回収業者から、一次集積の機能を担う建場(たてば)又は寄屋(よせや)、メーカーに原料として販売する問屋という段階を経て、あたかも細い流れを集めて一本の川になるように、各家庭から発生する少量の資源を集めて選別・加工し、工業原料として安定的に供給するシステムが構築されてきた。

 しかし、高度成長時代を経て、このようなきめ細かなリサイクルの仕組みは次第に衰退し、そのために地域単位でまとまって資源回収する仕組みが拡大された。「集団回収」という呼称が生まれたのもこの頃である。集団回収はごみ減量施策の一環として位置づけられ、リヤカーなどの資材の提供、回収業者の組織化、奨励金の交付などの支援策が講じられるようになった。

 昭和47年に東京都は「豊島方式」と呼ばれたモデルシステムをスタートさせた。豊島方式は、住民が資源を集める集積所(第1集積所)から公園などの規模の大きい場所(第2集積所)まで清掃事務所の車で運び出し、民間業者の回収効率を高めるとともに、混じっていたごみは都が処分するというものである。住民と回収業者の間で行われていた集団回収に、行政が積極的に関与するという点で画期的な方式であったといえる。さらに49年からは、23区全域で実施団体に奨励金を交付する制度が開始された。

 一方で、この頃から空き缶やワンウェイびんの消費量が増えてきた。ちなみに「あき缶処理対策協会」(現在のスチール缶リサイクル協会)、「オール・アルミニウム缶回収協会」(現在のアルミ缶リサイクル協会)、「食品容器環境美化協会」が設立されたのは昭和48年で、空き缶処理対策協会では活動当初の事業として、神戸市と横浜市で集団回収のモデル事業支援を行っている。

 しかし、古紙などにくらべて缶やワンウェイびんは資源価値が低いことに加え、回収業者は空き缶の選別、プレスなどの加工設備を持っていないことから、集団回収の対象とすることが難しかった。そこで市町村がごみ減量の観点からこれらを分別収集するようになり、集団回収は採算性の高い古紙を中心とし、容器類は分別収集(行政回収)という仕組みが一般的になった。

 しかし低落傾向が続いていた古紙価格が平成5年に一気に3〜4円も安値に暴落し、一部の古紙が逆有償(問屋に処理費を支払って引き取ってもらうこと)という事態に陥ったことから、分別収集の対象に古紙を加える市町村が増えた。特に東京都が平成11年から23区全域で古紙の行政回収を開始した影響は大きい。古紙の行政回収には当然のことながら、資源回収業界からは猛烈な反発があったが、「ごみ減量」という錦の御旗の前では、行政に仕事を奪われてその下請けとしてやっていくという選択を余儀なくされたところも少なくない。

 集団回収は市場原理が働くために、再生資源価格の変動によって回収量が左右される。計画的なごみ処理をめざす市町村にとっては、市況によってごみが増えたり減ったりするのは大いに困るということがある。また、自治会や子供会などの地域コミュニティ自体の活動の停滞や担い手の不足なども、集団回収に大きな期待をかけられないという判断の背景にある。こうしたことから、ごみ減量のためには不安定で持続性が期待できない民間主体のリサイクルから、公共事業としてのリサイクルを主体とする方向へと舵が切られ、容器包装リサイクル法によってその流れは決定づけられたといえる。

3.集団回収の現状

 行政回収によって集団回収は衰退するという厳しい見方もあったが、全般的にみれば杞憂だったようだ。シェアを奪い合うというより、相乗効果による回収量の増大という、よい結果につながっている。実施団体も減っているわけではなさそうだ。東京の都心区では、新しいマンションができるたびに集団回収登録団体が増えているという。

 スチール缶リサイクル協会が毎年、全国の市と特別区を対象として実施している「スチール缶の資源化に関するアンケート調査」によると、行政の施策として集団回収を実施している自治体(市と東京都特別区)は平成19年度で79.5%(図1)、回収品目としては古紙(98.0%)、古布類(75.5%)、アルミ缶(79.5%)のほか、スチール缶(53.8%)、生きびん(63.6%)、ペットボトル(12.0%)となっており(図2)、経年では実施している自治体の比率が増えている。また品目も多様化しており、ペットボトルを対象にする自治体も増えているなど、容器包装リサイクルの回収ルートとしても一定の役割を果たしていることがわかる。

図1

集団回収の実施状況

出典:「スチール缶の資源化に関するアンケート調査」結果より
(スチール缶リサイクル協会が毎年実施)
以下のデータもすべて出典は同じ。


図2

集団回収の対象商品

 集団回収を類型化したものが表1である。「民間主体・自治体支援タイプ」は、行政は奨励金等の支援はするが実施方法等については干渉しないタイプ、「官民協働タイプ」はそれよりも積極的に行政が参加して、団体と業者の調整や業者の協業化を支援する等の関与を深めているタイプ、「集団回収・分別収集融合タイプ」は集団回収でありながら回収日や集積所を行政が指定して、あたかも行政による分別収集のような形態で行っているタイプがある。

表1/集団回収の類型

集団回収の対象商品

出典:「協働型集団回収」に関する考察及び事例集
(平成19年3月、スチール缶リサイクル協会)

 融合タイプの先行例としては「平塚方式」がある。この方式は集団回収を自治会単位に再編し、定日定時に排出するようにルールを定め、回収業者が集めた資源の売却益は業者に帰属し、市民には一定の報奨金を支払うという形だ(報奨金の配分方法は住民に委ねられる)。つまり集団回収をごみの分別収集体系の中に組み込んでしまった形である。平塚市ではこれを「三者協調方式」と呼んでいる。

 官民協働タイプには様々な形がある。例えば名古屋市では、一般の集団回収に加えて「学区協議会方式」という新たな仕組みを導入した。この方式は小学校区を単位として、月1回以上定期的に実施することが条件で、学区で決めた拠点に集める方式と各戸の前に資源を出す方式のどちらかを選択する。世話人が出て積み込みを手伝ったり、業者とお金のやりとりをしたりせずにすみ、世話人の負担を軽くする配慮である。市は団体と業者の両方に、拠点回収と各戸回収の方式の違いに応じた助成を行う。集団回収を支える地域コミュニティの弱体化に対する工夫だ。

 業者側も状況に応じた工夫をしている例がある。横浜市では横浜市資源リサイクル事業協同組合が発案して始めた「横浜市民の回収」という方式がある。実施団体は自治会や子供会で、市には集団回収として登録されているが、回収拠点はごみステーションを利用して世話人の負担を軽減するとともに、広く地域の住民が誰でも参加できるような形をとっている。世話人の負担を業者側で肩代わりするような考え方だ。PR活動などにも業者が参加している。

 北海道江別市ではPTAが集団回収を行っている、各家の前に資源を出して戸別に回収している。スチール缶、ワンウェイびんなどあらゆる資源を対象にしており、校区内であれば誰でも家の前に出しておけば回収してくれる。回収の効率は悪いと思われるが、住民にとっては便利なサービスであるため、市内の集団回収のシェアの大半を占めている。薄利多売でシェアを拡大し、採算性を高めているということができるかもしれない。

 このようなきめ細かな回収ができるようになった背景には、資源回収事業の採算性が高まったことや、業者間の競争が激しくなってきたということも要因のひとつだろう。回収業者にとっては「サービス競争」を求められるようになってきたといえるかもしれない。

行政回収から集団回収へ移行した例

行政回収から集団回収へ移行した例。びん、缶はコンテナに出すので、行政回収と排出形態は変わらない。


学校での集団回収(愛知県西尾市)

学校での集団回収(愛知県西尾市)。PTAが中心だが地域住民も協力。学校は校庭を提供し、大型コンテナを何台も設置して大量の資源を回収している。

4.協働型の回収システム

 集団回収への関心が高まっているもっとも大きな理由は、自治体の経費削減効果が大きいことだ。18年度の集団回収調査によると、A市の集団回収にかかるコストは12円/?、行政回収は30円/?、B市は同じく44.5円/?と72円/?、C市は6円/?と24円/?で、コストパフォーマンスは集団回収の方が圧倒的に高い。

 現状では、行政回収と集団回収という二重のリサイクルルートになっているわけだが、リサイクルの効率を高め、社会的コストを低減するためには、これらふたつの仕組みの補完関係を再構築することが望まれる。つまりリサイクルにおける官と民の領域、または官と民の関係を見直すことが必要ではないかということだ。

 われわれは、その見直しの視点を「協働」ととらえ、官と民が協働して展開する集団回収を「協働型集団回収」と名付けた。(「協働型集団回収」に関する考察及び事例集、平成19年3月、スチール缶リサイクル協会)

 「協働」は、地方分権の流れにおける地方自治のキーワードである。従来は行政が独占的に行ってきた「公共」の領域を、市民やNPOなどの市民とともに担うことを言う。ここから敷衍して、「協働型集団回収」を定義すると、「再生資源の市場性を積極的に活用し、地域の実情に合わせて、住民、資源回収業者、自治体が相互の役割を補完し合いながら、循環型社会の構築のために家庭から発生する資源を回収し、有効に活用する活動の体系」ということができる。

 例えば行政回収と集団回収の二重の仕組みを解消して、地域にすべて委ねるというものだ。業者が対応できないものは行政が支援する。住民は回収場所や回数を地域の意思で決定する。地域は労力に応じた奨励金を受け取る。こうした取組ができない地域は、従来通りの行政回収を実施する。

 甲府市は集団回収をメインルートと位置づけて、行政回収は集団回収が実施できない地域に対する補完システムと位置づけている。東京・荒川区では古紙だけでなく、空き缶や空きびん、ペットボトル、トレーを含む資源をすべて集団回収で回収し、区の資源分別収集から移行するという方針を打ち出して進めている。中野区も古紙の行政回収を町会やマンション単位の集団回収という形に変えた。

 地域団体が実施する集団回収という概念の範疇に入らない、資源回収にも注目すべき事例がある。 名古屋市の中部リサイクル運動市民の会が行っている「リサイクルステーション」は、スーパーや商店街と協力して駐車場などで日にちを決めて開催しているもので、誰でも自由に資源をもってくることができる仕組みだ。地元のマスコミが開催場所や日時などのスケジュールを告知し市民ボランティアが受付業務を行う。市は集団回収と同じ扱いにして奨励金を交付しているが、不足する経費は寄付でまかなうというように様々な主体の協働で運営されているシステムだ。

名古屋市のリサイクルステーション

名古屋市のリサイクルステーション。ホームセンターの駐車場等で定期的に開催している。NPOのボランティアが受付を行っている。

 新庄市ではNPOが商店と連携して資源物を集めている。協力店舗に資源物を持ち込むと量に応じて「ちょぺっと」という地域通貨が還元される仕組みで、「ちょぺっと」は商店街で利用できる。行政からの補助金はなく、資源物の売却益のみで運営されている仕組みだ。

 集団回収という概念を超えて、こうした新しいリサイクル活動も視野に入れておく必要がある。これらを含めて協働型のリサイクルとして多様なシステムが登場することが期待される。