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地域同士が連携した地域再生システムづくりに向けて

研究員 津賀高幸

 滋賀県立大学主催、滋賀大学、聖泉大学との共催による「地域再生システム論」は平成20年9月22日、23日そして27日の3日間にわたる連続講座として開講された。
 内閣府からは講師派遣等の協力を得、滋賀県、彦根市、木之本町、豊郷町といった自治体と彦根商工会議所からの後援を受け、産官学民連携しての開講となった。

 筆者はこの講座のプログラム立案から地域との調整、講座の実施の過程に携わった関係から、以下、その概要について報告する。

大学の実績・ポテンシャルを踏まえた「地域再生システム論」

 滋賀県立大学では、環境科学部・環境フィールドワーク、人間文化学部・環琵琶湖実習など地域をフィールドとした講義プログラムや、地域の課題解決にむけて、大学・学生の取り組みをサポートするシステムづくりを行う「近江楽座」、NPO・社会人等を対象に、地域再生のリーダーとなる資質を有した人材として「コミュニティ・アーキテクト(近江環人)」を育成する特別講座など様々な取り組み、実績がある。
 9月末を予定していた3日間の集中講義、フィールドワークなどを取り入れるという枠(条件)の中で、何を学ぶのか、3つの視点から組み立てを行った。

 第一のポイントは、「地域再生とは、『地域が自ら考え、地域が自ら動く』こと、さらに大学が地域再生に関わることの意義を見いだすことを目的に設定した。

 第二に、大学のポテンシャル・実績から、地域再生における大学の「シンクタンク」機能の可能性について論点を示してみた。

 第三に、実際に地域でプロジェクトを起している経験があることから、その実績や実力を引き出すために、地域の課題や実態を把握した中から、地域再生に関わる「事業スキーム」を考える機会とした。

滋賀県の特徴

 琵琶湖の集水域を中心とする面積約4千平方キロメートルの県土におよそ140万人が暮す滋賀県は、県土の約6分の1をしめる琵琶湖を中心として、地域環境の縮図とも言える生態系の断面を有している。さらに県域は人口増加が著しい湖南、田園地帯が広がる湖東、里山の原風景として紹介されることもある湖西、北陸に近く豪雪地帯を含む湖北という、これも日本の縮図と言えるような多様な地域で構成されている。

 そこでこの滋賀県において、自然生態の保全といった課題も踏まえた地域再生の仕組みが実現されるならば、それは日本の他地域のためにも有効なモデルを提供することができると考えられる。

実施結果

 当初の企画のポイント、3日間の「地域再生システム論」の成果を振り返り、滋賀における「地域再生」「地域再生システム」について整理した。

地域に関わった実績・得られた智恵のデータベース化

 今回の企画をするにあたって、滋賀県立大学においては環境科学部、人間文化学部を中心に、また滋賀大学、聖泉大学における地域との関わりや実績、プロジェクトの成果などの把握に努めた。結果として、多様な関わりがあるにも関わらず、その全体像は把握・集約されていないことが明らかになった。大学・学生の果たす役割や地域からみた大学への期待、地域の受入体制などのしくみづくりを考えるためにも、全体像の把握・データベース化は必須と思われる。

■地域再生のマネジメント組織の必要性
 地域再生の実績にかかるデータベース化だけでは不十分であり、その基礎的な情報をもとに、大学の持つ専門的な知見、マンパワー、実績から導き出された智恵などを、地域の実態やニーズにあわせて、アプローチできるマネジメント機能が欠かせない。市民活動センターのような「中間支援組織」とは意味合いの違う、大学と地域、行政などの関係機関などそれぞれセクターの持つ実力を十分に引き出すための調整機関について、検討されることを期待したい。

 中間支援組織の考え方、あり方についても様々な模索がされている。詳細は字数の都合上紹介できないが、新潟県中越地震の復興支援のために設立された「社団法人中越防災安全推進機構 復興デザインセンター」のアプローチは参考になるであろう。

■地域再生を支援するためのビジョンづくりと事業スキーム
 地域再生システム論(次年度から地域活性化システム論)では、地域再生のために必要な事業スキームを考える機会を取り入れることを期待したい。地方公共団体の財源が厳しくなる中で、手を打たねば、取り返しがつかないところに行きかねない。地域の求めているものを把握し、地域の勇気づけ、自信を取り戻す方策を考えるためにも、当講義の意義といえる。

 事業スキームをつくり、地域を動かすことだけが「地域再生」ではない。「地域再生とはなにか」を地域住民、大学、関係機関と繰り返し問いながら、「地域の目指すべきビジョン」を描いていくプロセスが重要である。プロセスを創りだし、ビジョンを描くためのしくみこそが「地域再生システム」と言えるのではないだろうか。





「地域再生システム論」実施概要(平成20年度)

9月22日(月) 講義・パネルディスカッション

大学サテライト・プラザ彦根(彦根駅前アルプラザ6 階) 対象:滋賀県民、近江楽座に関わる学生、近江環人受講生等 受講者数約80名 講義1「全国の地域再生を学ぶ」 講師:佐賀浩(内閣官房 地域活性化統合事務局参事官補佐) 「地域再生」の基本的な理念や構造改革特区制度などの概略を踏まえつつ、地域主体となった事例や大学・学生と地域が連携した事例等を紹介。 講義2「『世界単位』としての湖国モデル」 講師:高谷好一(聖泉大学教授・滋賀県立大学名誉教授) 「世界単位」から見た滋賀の地理・歴史的特徴の把握、その独自の風土を生かした滋賀の地域再生のあり方や研究実績からみた研究者・大学のあり方。 パネルディスカッション「大学と地域の連携による地域再生」 パネリスト 佐賀浩(内閣官房 地域活性化統合事務局参事官補佐) 高谷好一(聖泉大学教授・滋賀県立大学名誉教授) 柴田いづみ(滋賀県立大学環境科学部教授) 山崎一眞(滋賀大学産業共同研究センター教授) コーディネーター 鵜飼修(滋賀県立大学 環境科学部准教授 近江環人地域再生学座担当)

9月23日(火・祝) フィールドワーク・ワークショップ

【歴史文化遺産の再生】(彦根市) 彦根市内の歴史的建造物(花しょうぶ通り商店街・旧郵便局)の保全、活用について、防災やまちづくり・観光・景観保全等の観点から総合的な方策を考える。 教員:高田豊文(滋賀県立大学環境科学部准教授) 【農村再生】(豊郷町) 豊郷町吉田地区の農業経営について、これまでの実績、地域ブランディングの観点から、農地・経営の再生方策を考える。 教員:増田佳昭(滋賀県立大学環境科学部教授) 【移住・交流】(木之本町) 木之本町における古民家再生と移住・交流をテーマに、地域のニーズ、移住交流の受け入れ体制などを踏まえた地域再生の方策を考える。 教員:森川稔(滋賀県立大学人文学部准教授)

9月27日(土) フィールドワーク報告会と全体講評会

大学サテライト・プラザ彦根(彦根駅前アルプラザ6 階) フィールドワーク報告会 1日目、2日目に得られた情報を元に、調査した地域の再生方策(例:地域再生プラン)を紹介。 ディスカッション パネリスト 山崎 一眞(滋賀大学産業共同研究センター教授) 柴田 いづみ(滋賀県立大学環境科学部教授) 佐賀 浩(内閣官房 地域活性化統合事務局参事官補佐) 森川 稔(滋賀県立大学人間文化学部准教授・近江環人地域再生学座担当) 高田 豊文(滋賀県立大学環境科学部准教授) コーディネーター 鵜飼 修(滋賀県立大学環境科学部准教授・近江環人地域再生学座担当)


参考情報

近江環人地域再生学座※別ウィンドウで開きます

近江環人第3号※別ウィンドウで開きます