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白煙防止装置停止の効果〜佐賀市における実証実験〜

研究員  糠澤 琢郎

1.実験の目的

 廃棄物の焼却施設における白煙防止装置は、廃熱ボイラにおいて発生する蒸気の一部を空気加熱器に導入し、蒸気で外気の加熱を行い、加熱された外気を煙突に吹き込むことにより白煙を不可視化するシステムであり、特に、一般廃棄物焼却施設については、ほとんどの施設に取り付けられている。

 白煙防止装置は、周辺住民の不安を取り除くために、本来ならば発電等に有効利用できる熱を用いているため、この熱エネルギーを施設内の発電等に使用することができれば、施設におけるエネルギーの使用効率を向上できる。また、それにより、温暖化の防止に寄与することができる。白煙防止は視覚的効果のみであり、また、ダイオキシン類や窒素酸化物等もO2=12%換算値で評価されるため加熱空気による希釈の影響はない。

 本実証実験は、平成20年度の環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部の委託事業として、佐賀市環境センター内清掃工場の焼却施設において白煙防止装置を停止させ、温室効果ガス排出抑制の効果を評価すること等を目的に実施された。

 本報告においては、白煙防止装置の停止による温室効果ガス排出抑制効果ならびに、周辺環境に与える影響の二点を中心に、実証実験において行われた調査結果について説明する。

2.実験の概要

○実施場所:佐賀市環境センター内清掃工場
○実施期間:平成21年1月5日(月)〜2月2日(月)
○実施目的:
 焼却施設の白煙防止装置を停止させ、装置の停止による温室効果ガス排出抑制効果ならびに環境影響等について評価する。
○実験内容:下記の通り。
(1) 白煙防止装置停止による温室効果ガス排出抑制効果
 1)高圧蒸気(発生総量)1tあたりの発電量の増加
 2)二酸化炭素の削減量の増加
(2) 白煙防止装置停止が周辺環境に与える影響
 1)排ガス調査
 2)臭気調査

佐賀市清掃工場の白煙防止フロー
図:佐賀市清掃工場の白煙防止フロー
3.実験内容

(1) 白煙防止装置停止による温室効果ガス排出抑制効果
 清掃工場データを比較し、白煙防止装置の停止に伴う発電量の増加、CO2削減効果等について把握した。
1) 高圧蒸気(発生総量)1tあたりの発電量の増加
 本実験を実施した佐賀市環境センター内清掃工場の焼却施設においては、白煙防止装置に用いられている蒸気量は設計値で蒸気発生量の3%〜10%である。これを発電に利用したとしても、白煙防止装置停止による蒸気量の増加分がごみ量やごみ質の変化に伴う蒸気量の増減によって埋もれてしまうことが懸念された。そこで、白煙防止装置の停止期間における「蒸気発生量の総和と発電量の総和の割合」=「高圧蒸気(発生総量)1tあたりの発電量」を求めた上で、白煙防止装置の稼働時期におけるそれと比較することで、白煙防止装置の停止による効果を算定するものとした。
2) 二酸化炭素の削減量の増加
 白煙防止装置の停止によって発電量が増加し、それに伴って売電量が増加する。この売電量の1日あたりの増加分から、二酸化炭素の削減量を算定した。

(2) 白煙防止装置の停止が周辺環境に与える影響
 白煙防止装置の停止により、周辺環境に与える負荷の変動を確認するため、1)排ガス調査及び2)臭気調査を行った。なお、排ガス及び臭気調査の測定にあたっては、定常状態を十分確認してから実施した。
1) 排ガス調査
 排ガス調査では、@ばい煙並びにAダイオキシン類の測定・分析を行った。通常佐賀市清掃工場において行われる排ガス中のばい煙測定分析業務及びダイオキシン類測定分析業務に準拠して実施した。試料採取は実証実験前に1回、実験期間中に2回、実験後に1回、合計4回実施した。
2) 臭気調査
 臭気調査については、平成20年中に佐賀市清掃工場で実施した臭気測定分析業務に準じて行った。試料採取は実証実験前及び期間中に各1回の合計2回実施した。

排ガス及び臭気の調査の内容
表:排ガス及び臭気の調査の内容
4.実験結果

(1)白煙防止装置停止による温室効果ガス排出抑制効果
1)高圧蒸気(発生総量)1tあたりの発電量の増加

【1】実証実験実施期間
 白煙防止装置の停止実証実験は、平成21年1月5日(月)〜2月2日(月)まで実施した。ただし、初日と最終日の途中から白煙防止装置の停止又はアイドリングをしたため、昨年度データとの比較は1月6日〜2月1日までの27日間で行った。

【2】焼却ごみ量
 20年度の焼却処理量は186t/日から徐々に増加し、1月13日に200t/日を超え、その後増減を繰り返したがほぼ一定量で推移した。19年度と比べると、前半はやや少なかったが1月13日には19年度を上回り、その後は交差を繰り返して19年度と大きな差がなく推移したが、19年度は1月29日から減少し150t近くまで減少したため、差が大きくなった。

焼却ごみ量

【3】一日あたりの高圧蒸気の発生量の推移
 20年度における一日あたりの高圧蒸気の発生量(「20年度合計」)は、実験開始当初に565t/日からやや減少したが、その後は580〜590t/日の幅で推移している。19年度(「19年度合計」)と比較すると、同様の値でスタートしたもののその後上下し、1月14日以降はほぼ同様の値で推移していたが、「19年度合計」が1月29日から減少したため、差が大きくなった。
 また、タービンへの蒸気流入量を19年度(「19年度タービン」)、20年度(「20年度タービン」)で比較してみると、それぞれの年度の「合計量」と同じような変化となっている。

高圧蒸気の発生量の推移

【4】発電量と売電量の推移
 20年度の発電量(「20年度(発電)」)は、91,790kWh/日からやや減少した後、増減を繰り返し、1月16日には95,000kWh/日近くまで増加した。その後はほぼ横ばいである。19年度(「19年度(発電)」)と比較すると概ね上回っており、19年度が1月29日以降減少したため、差が大きくなった。
 また、20年度の売電量(「20年度(売電)」)は、スタート当初に24,960kWh/日からやや減少したが、1月8日から増加に転じ、1月19日は29,000kWh近くまで増加した。19年度と比較すると、1月7日に19年度と同様の値であった他は、すべての期間で19年度を上回っている。

発電量と売電量の推移

【5】高圧蒸気(発生総量)1tあたりの発電量
 20年度の高圧蒸気(総発生量)1t当たりの発電量は160kWh/t前後でほぼ横ばいである。一方、19年度は150kWh/t前後でほぼ横ばいで1月29日以降は減少している。これまでの期間では、19年度の値を100とすると20年度は106〜109で推移し、1月29日からは19年度のデータが低くなったために、対19年度比は124まで大きくなった。

高圧蒸気(発生総量)1tあたりの発電量

【6】まとめ
<ケース1> 27日間での比較
 19年度と比較すると、ごみ量の増加は0.7%、高圧蒸気量が2.0%の増加であったが、タービンへの蒸気流入量は5.7%、発電量は11.4%とそれ以上の増加となった。さらに発電量は35.7%の増加となった。また、高圧蒸気総量1tあたりの発電量は9.2%の増加となった。

前年度との比較:27日間(1/6〜2/1) 前年度との比較:27日間(1/6〜2/1)

<ケース2> 23日間での比較
 19年度は1月29日以降ごみ量が急速に減少したため、1月28日までの23日間で比較してみると、ごみ量と高圧蒸気量(合計)では19年度比がそれぞれ-2.7%、-1.1%となったが、タービン蒸気流入量、発電量、売電量ともそれぞれ3.5%、6.4%、36.6%増加した。また、高圧蒸気総量1tあたりの発電量は7.6%増加した。
 以上の結果から、白煙防止装置停止に伴う発電量が増加したことがわかる。

前年度との比較:23日間(1/6〜1/28) 前年度との比較:23日間(1/6〜1/28)

2) 二酸化炭素の削減量について
 二酸化炭素の削減量を23日間のデータで比較してみると、売電量の差が159,050kWh、1日あたり6,915kWh、CO2に換算して23日間で59.6t-CO2、1日あたり2.6t-CO2の削減につながったことがわかる。
 白煙防止装置が主に稼働しているのは半年間(6ヶ月間)であるので、半年間では466.78t-CO2が削減されることになる。

二酸化炭素の削減量
※九州電力公表の排出係数0.000375tCO2/kWhを使用

(2) 白煙防止装置停止が周辺環境に与える影響
1) 排ガス調査
【1】ばい煙測定・分析結果
 ばいじん、硫黄酸化物はいずれもNDであり、窒素酸化物、塩素酸化物ともすべて基準値内であった。
 物質ごとにみると、窒素酸化物は実験期間中の2回目が最も低く、同じく実験期間中の3回目がもっとも高い値となった。
 また、塩化水素はもっとも低いのが実験期間中の3回目と、実験後の4回で、最も高いのが実験期間中の2回目であった。
 いずれの場合も、実験期間中に高い値を示したとは言えず、実験との関連性は認められないと考えられる。

ばい煙分析結果 ばい煙分析結果
※実験前後は1回目と4回目の平均。実験期間中は2回目と3回目の平均。

塩化水素調査結果

窒素酸化物調査結果

【2】ダイオキシン類測定・分析結果
 ダイオキシン類の分析結果(総ダイオキシン類)は、すべて基準値内であった。
 同じく総ダイオキシン類の値をみると、実験前の1回目がもっとも高く、その後2回目、3回目、4回目徐々に値減少してきた。
 いずれの場合も、実験期間中に高い値を示したとは言えず、実験との関連性は認められないと考えられる。

ダイオキシン分析結果(1号炉) ダイオキシン分析結果(1号炉)
ダイオキシン分析結果

【3】臭気濃度(指数)
 臭気濃度とは、ある臭気を無臭の正常な空気で希釈したとき、ちょうど無臭に至るまでに要した希釈倍数である。下記の検査は6人のパネルで実施し、最大と最小の2人の結果を除外した4人の結果を平均したものである。
 結果をみると、白煙防止装置停止前の12月25日には3.1だった閾値が、白煙防止装置停止中の1月20日の検査では3.2に増加している。しかしながら、臭気指数は採用した4人のパネルのうち1人(パネルA)の判定の違いによるものであるため、両日の結果に有意な差があるとは認められない。

12月25日の臭気濃度(指数)の結果
1月20日の臭気濃度(指数)の結果
臭気調査結果
臭気調査結果

 アンモニアからアセトアルデヒドまでの濃度をみると、両日の結果とも定量下限値未満(ND)が多い。12月25日と1月20日とで比較すると、アンモニアが0.6から3.0に、トリメチルアミンがNDから0.0018へ、アセトアルデヒドがNDから0.007となった。他方、硫化水素は0.012からNDとなった。
 以上に見られるとおり、臭気濃度の値そのものに大きな変化はなかったと考えられる。

5.まとめ

(1)白煙防止装置停止による温室効果ガス排出抑制効果について
 当初はごみ量やごみ質の変動の中に発電量の増加が飲み込まれてしまい、白煙防止装置停止による効果が明確にならないのではないかと危惧されていたが、検討の中でごみ量・ごみ質が変動しても、白煙防止装置の停止期間における「蒸気発生量の総和と発電量の総和の割合」を求めた上で、白煙防止装置の稼働時期におけるそれと比較することで、明確に発電量の増加、すなわち温室効果ガス削減効果を示すことができた。なお、ごみ量・ごみ質とも前年と大きな変化はなかった。

(2) 白煙防止装置停止が周辺環境に与える影響について
 一般に白煙防止は視覚的効果のみであり、装置を停止しても排ガス中のダイオキシン類や窒素酸化物・硫黄酸化物等の有害物質の濃度に影響することはないとされている。本実証実験における排ガス調査・臭気調査は、そのことを裏付け、周辺住民の白煙防止装置の停止に対する不安を払拭する状況証拠となるものであり、重要な意味を持つ。
 調査の結果、排ガス・臭気ともに、白煙防止装置の停止との因果関係は認められなかった。

(3) 今後の展望
 清掃工場を抱える自治体は、清掃工場の周辺住民への対応は細心の注意を払っている場合が多い。清掃工場からの白煙が見えると気になるだろうということで、白煙防止装置を付けたのもそのような気遣いの結果であったと考えられる。
 地球温暖化対策があらゆる分野で求められる中、清掃工場において実施する温室効果ガス排出抑制対策に関しても、環境・人体に対する影響や費用対効果等について、科学的な情報をもとにしっかりと議論したうえで最適な選択をすることが望ましい。白煙防止装置の停止は環境への負荷もかからず、実施にあたっての費用も発生しないため、自治体等が比較的取り組みやすい対策であるといえる。今後は本実験で得たデータをもとに住民と議論を重ね、住民との信頼関係を深めた上で、清掃工場における更なる温室効果ガス排出抑制に取り組むことが肝要である。