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自治体の3R普及啓発活動とコミュニケーション

代表取締役所長  山本 耕平

1.はじめに

 広報(Public Relations)とは、組織等が広く一般公衆に伝えたい情報を発信し、伝えることである。民間企業では商品をアピールして消費者の購買心を高めるための「広告」(Advertisement)と、企業活動の「広報」は区別して取り扱われるが、行政では行政サービスの「広告」が行われることは少なく、お知らせするという意味での「広報」がほとんどである。ただし「PR活動」という場合には、広告・宣伝的な意味合いが含まれる。
 Public Relationsの概念は、戦後の民主化政策の一環としてわが国に導入された。Public Relationsは、文字通り組織(行政)と一般公衆(国民、市民)との双方向の関係を意味しているが、日本では広報と広聴というように別々に考えられてきたようだ。
 ところで、最近では広報という言葉より「啓発」という言葉がよく使われる。啓発とは「知識をひらきおこし理解を深めること」(広辞苑)で、英語ではEducation、すなわち教育することという意味になる。
 言葉遊びをするつもりではないのだが、行政の広報に関して用語の使い方が少しずつ変わってきたのは、市民に情報提供する姿勢や手法が変わってきたからではなかろうか。
ごみの収集方法は非常に複雑になったために、広報活動はきわめて重要になっている。容リ法の運用上、自治体が選別・圧縮などを行った容器包装廃棄物は、異物の混入など質が悪い場合は引き取りを拒否されることがある。排出源での分別の徹底が品質の善し悪しに直結するので、市民にきちんと分別してもらうようPRすることは何よりも重要になっているわけである。

2.ごみの分別と広報

 周知のように分別の方法は自治体によって異なる。ごみの出し方や分別の仕方は自治体ごとのルールとして定められている。しかし行政サイドからはルールであっても、市民にとってはいわば「生活習慣」である。間違った習慣が身についてしまうと、知らないうちにルール違反をしてしまうということもありがちなことだ。いつもルール違反をしている人を問いただすと、単なる勘違いであったり転居前の自治体のルールにしたがっていたりするという話はよくあることだ。勤務先のルールと居住地のルールが違うということも多い。それぞれの自治体が「わが町のルール」をPRしても、情報を受け取る側では混乱する一方である。
分別のルール違反に対して罰則を設けている例もあるが、罰則はあくまで例外的な手法にすぎない。ルールを守ってもらうためには、そのルールがなぜ必要なのか、なぜそのようなルールを定めたのかを住民に理解してもらうことが不可欠である。理由の説明なしにルールや規則を押しつけても、徹底させることは難しい。このような意味から、一方的な広報だけでなく、住民との対話、コミュニケーションが重要になってくるのである。
問題のひとつはごみ出しのルールがあまりにも多様だということである。分別の方法は、分別ごとの「呼び方」からそれぞれの区分ごとの品目、排出する際の容器(あるいは袋)、収集回数など様々な「要素」の組み合わせによるので、組み合わせの可能性を考えると、一つとして同じ方法はないといっても過言ではないほどだ。
 「資源ごみ」も同様だ。特に混乱しがちなのは、プラスチック製容器包装(いわゆる「容リプラ」)とその他紙製容器包装だ。容リプラとプラスチック製品を一緒に集めているところもあれば、マヨネーズやケチャップなど汚れを取りにくいものは可燃ごみに区分しているところがあるなど、自治体ごとにルールが違う。その他紙製容器包装は、容リ法にもとづかない「雑紙(ざつがみ)」という区分で雑誌や段ボールなどと一緒に集めている自治体が多い。これらはすべて製紙原料となる。そのため「紙」という表示があっても複合素材の紙製容器包装は可燃ごみに区分しているところが多く、排出する側にとっては法律で定められた紙製容器包装の表示は全く意味をなさない。
 容リ法の仕組みが複雑だということが背景にあるが、ある程度はごみに関する知識がなければ守れないほど複雑で細かいルールになっているので、広報活動もそのことを前提として工夫しなければならない。ごみカレンダーや分別事典の発行、インターネットの検索機能を利用して品名を入れると分別区分が検索できるようなシステムをつくっているところもある。古典的な手段としては、説明会やステーションでの立ち番など直接コミュニケーションをとる方法が効果的なようである。

3.啓発活動の意味

 分別収集、リサイクルは行政の事業に対して市民の協力を呼びかけるもので、情報発信側と受け手側すなわち行政と市民の二者のコミュニケーションである。3Rは行政の事業だけでなく、民間の活動を包含するので、行政と市民、民間事業者の三者のコミュニケーションを考えていかなければならない。また民間事業者には生産、流通、リサイクラーなど多様な事業者があり、NPOなどの取り組みも大きな役割を担っている。そういうことから、行政からの一方的情報提供のニュアンスが強い広報ではなく、啓発という言葉が広まった(ついでながら、啓蒙という語は「蒙(くらやみの意)を啓いて人々を導くこと」で、上から目線の用語なので、最近は行政文書としては使われなくなった)。
 3Rの推進には、それぞれの主体の意識変革や市民・消費者の消費行動、生活スタイルの転換が求められる。容器の使い捨てという利便を捨てて、販売店までリユース容器を持参したり返却したりするというエネルギーは、それに見合うだけの相当の経済的メリットがなければ沸いてこないだろう。またそのような経済的インセンティブを与える仕組みの構築は、現実には難しい。
 したがって市民の行動を変革する重要なモチベーションとして、環境を守ろうとする意識をいかに高めていくかが重要になる。利便性をすべて捨ててしまうのではなく、TPOに応じて容器を選択したり、可能な範囲でリユース容器を使う。「いつでもどこでも使い捨て」はやめよう、その行為が積み重なって深刻なごみ問題、環境問題につながっているということを教えるのは教育の役割だ。環境教育では「気づき」がもっとも重要とされ、知識の習得はその後だ。行動に結びつけていくためには主体的に考えることが必要で、そのためには自らが問題に気づくことから始めなければならない。
 啓発活動として大きな成果を上げている例が、横浜市資源リサイクル事業協同組合が主催している「環境絵日記コンクール」と「リサイクルデザインフォーラム」だ。横浜市内小学生を対象に、絵日記という形で3Rや地球環境問題について作品を募集しているもので、2000年に始まり2011年の応募数は18690点で、市立小学校の児童数の1割近い。世帯数と考えれば、市民啓発としての効果は大きい。フォーラムは絵日記の展示、表彰、子供向けのパフォーマンスや体験学習など多彩なプログラムが用意されており、約1万人の来場者があるという。市の資源循環局や温暖化対策本部、教育委員会などの行政機関のほか、多数の民間企業が協賛、協力する大規模なイベントに成長している。
環境絵日記 >>> http://www.recycledesign.or.jp/enikki/

環境絵日記

環境絵日記ホームページ

4.協力事業の内容

 3Rを推進するための政策は、規制や義務づけでは十分ではない。特にリユース、リデュースは規制的な措置では困難だ。重要なことはガバナンスだ。ガバナンスというのは、社会を構成するいろいろな主体(行政も含む)が協力して社会を統治するということである。3Rに敷衍していえば「3Rガバナンス」ということになる。
 3Rガバナンス構築のためには、主体間のコミュニケーションが最も重要である。そのためには社会的な基盤として情報共有できるような仕組みを構築していくことが必要である。インターネットが社会変革の大きなツールになっていることは説明するまでもないが、3Rガバナンスという観点から言えば、まだ行政情報や企業情報の公開度は十分とは言えないかもいれない。政策を論ずるためには、統計など基本的な情報が公開されていなければならないのである。キャラクターやグッズで市民の関心(歓心?)を集めることも重要だが、3Rガバナンスの基盤として、情報共有の仕組みをつくっていくことが必要だ。
 インターネット上でバーチャルなプラットホームをつくっている例がいくつかある。横浜市は2011年に新しい一般廃棄物処理基本計画を策定し「ヨコハマ3R夢(スリム)プラン」と名付けている。この中で、リデュースに対する取り組みとして「ヨコハマR(リデュース)ひろば」と名付けたプラットホームをつくっている。今までバラバラに行われていた取り組みや、少数の人だけが持っていた知識を、ヨコハマRひろばで共有し、結びつけることでより大きく効果的な取り組みを産み出していくことをねらいとしている。NPOや民間のいろいろな事業者のアイデアや新しい取り組みをコアとなるヨコハマR(リデュース)委員会で検討した上で、ホームページ上などで情報発信し、各主体がみんなで応援していこうという仕組みだ。マイボトルの普及、ノン・トレー販売、子供靴の回収など、具体的なプロジェクトがいくつか動き出している。
 行政の広報や啓発活動は、一方的な宣伝活動すなわちプロパガンダであってはならない。3Rへのモチベーションを高めるためには主体間のコミュニケーションと協働が不可欠であり、「ゆるキャラ」や「グッズ」でコミュニケーションのきっかけをつくったあとが重要である。