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1.8リットルびん(一升びん)の回収率・再使用率向上に関する調査研究

株式会社ダイナックス都市環境研究所 山本耕平・北坂容子・石垣歩
日本酒造組合中央会 木内真二

1. 調査研究の目的

1.8Lびん(一升びん)は昭和のはじめに導入された日本独特の共通規格びんで、清酒、焼酎などの酒類だけでなく、醤油、ソース、食用油など多様な食材の容器としても使われてきた。容器包装リサイクル法(以下、容リ法)では、第18条に規定する自主回収認定容器に認定されている。しかし1.8Lびんの需要が減少するとともにその回収率も年々低下し、2013年には自主回収認定の基準とされる80%を下回ってしまった。

1.8Lびんをめぐる問題は以前から認識されてきたが、その要因として消費者の嗜好やライフスタイルの変化に伴う1.8Lびんの需要減少を指摘するにとどまってきた。しかし回収率(出荷数量に対するびん商が回収した数量の割合)や再使用率(出荷量に対してメーカーが使用した回収びんの割合)の低下の要因は、酒類の販売形態の変化やメーカーの販売戦略、さらには空きびん回収には不可欠なP箱(プラスチックの回収容器)の流通の問題、洗びんの技術やコストの問題など多岐にわたる。

本調査はこうした状況をふまえ、消費者やメーカー、販売店、びん商など1.8Lびんに関わる多様な主体に対する調査を通して、1.8Lびんの回収率・再使用率低下の要因を分析するとともに、具体的な方策を検討することを目的として実施したものである(*1)。

2. 1.8Lびんの回収率等の推移

1.8Lびんの出荷量(使用数量)と回収率の推移を図1に示す。出荷量は2008年2億3,280万本であったものが2013年には1億5,855万本と、5年間で32%も減少している。

回収率は2008年88.2%から年々低下し、2013年には78.8%になったる(なお、メーカーが最終的に再使用した再使用率は、66〜68%と推計されている)。容リ法では自主回収の認定に係る回収率は、「おおむね90%」と定められている(容リ法施行規則第20条)。ただし、「現状の回収率が80%以上であり、その回収の方法から判断して、おおむね90%の回収率を達成するために適切なものであると認められる場合については、自主回収の認定をする」としているが、その基準を下回る結果になってしまっている。

また新びんでの出荷数量はほぼ横ばいだか、回収びんの使用が減ったため、新びんの構成比率が5年間で24.4%から32.9%にまで増えている(*2)。

図1

図1 1.8Lびんの出荷量と回収率の推移
1.8L壜再利用事業者協議会資料より作成
※調査時期が異なるため新びん利用本数と回収びん使用本数の合計が出荷数量にならない

3. 回収率・再使用率低下の要因

(1)酒屋経由での空きびん回収の減少

1.8Lびんの消費は業務用が大半を占めるが、業務用は基本的には業務用卸・小売店経由でほとんど回収されている。しかし一般家庭で消費された1.8Lびんは、消費者?酒屋?びん商?メーカーという回収ルートの衰退によって、回収率が大きく低落している。その理由の一つは市中の酒屋の減少である。国税庁のデータ(*3)によると、一般酒販店の数は2001年度では約7万1000軒だったが、2011年には5万7000軒にまで減少、酒類販売小売店に占める割合は69.8%から34.7%にまで低下している。スーパー、コンビニでの酒類販売が増えたが、スーパーやコンビニでは1.8Lびんを回収しているところは少ない(*4)。また消費者アンケート調査(*5)によると、この1年間に1.8Lびん入り酒類を消費した人のうち実際に「買った店に返した」は21.8%で、58.6%が「市町村の分別収集に出した」と回答している(図3)。しかし市町村がリターナブルびんを選別している割合は半数程度で、そのうち1.8Lびんを回収している割合はさらに低くなる(*6)。

図2

図2 1.8Lびんの流通ルート

図3

図3 1.8Lびんの処分方法(消費者調査)

(2)回収びんに対する品質要求の高まり

びん商のヒアリング調査では「メーカーから新びんに近い品質のものを求められる」という声があり、メーカーからは「消費者や流通企業者の品質要求が高く、キズのついたびんは使いたくない」という意見がある。こうした過剰な品質要求に応えるために、回収しても廃棄されるびんが増えており、再使用率の低下につながっている。

(3)再使用しにくい1.8Lびんの増加

1.8Lびんの色は茶と緑がほとんどだが、黒、透明、水色やフロスト加工(磨りガラス加工)したびんがある。これらのびんは高価格帯の商品に使われることが多く回収びんの需要は少ない。

またメーカー調査 によると、洗びん時にはがれにくいラベルが増え、洗びんコストの増加や回収びんの品質低下につながっている。ラベルの問題は回収びんの再使用のカギである洗びんの効率化を大きく妨げる要因となっている。

(4)回収びんのコスト高

洗びんコストや不良率が高まり、回収びんのコストが高くなり、新びんとの価格差が縮まっている。メーカーでは新びんの方が品質管理しやすく、回収びんのコストメリットが低下するとさらに使用が減る可能性がある。

(5)P箱の不足

1.8Lびんだけでなくリユースを前提としているびんは、製品の出荷時から空きびん回収までP箱で流通する仕組みで、P箱に入らないバラびんは回収ルートに乗らない。1.8LびんのP箱はレンタル方式で流通しているものが多いが、P箱ではなく段ボール出荷が増えたことや、流通過程で滞貨となっているものが多く、結果的には回収現場でP箱不足が生じている。P箱に収まらないびんはカレット化されてしまう。市町村で回収されたびんも、P箱不足によってカレット化されてしまうという実態がある。

図4

図4 1.8Lびんの回収率低下の要因(メーカー調査)

まとめ

1.8Lびんの需要や回収率の減少に歯止めをかけるためには、以下のような取り組みが求められる。

  1. メーカー、流通、自治体、消費者、びん商などの関係主体間で、情報と問題認識の共有を進める。特に回収びんの品質基準づくりなどが急がれる。
  2. 東京などの消費地と東北や九州など日本酒、焼酎の生産地とでは実態がかなり異なっており、地域の実情に応じて対策を講じていく必要がある。
  3. 酒造メーカーは中小企業が多く、1.8Lびんの社会的意義やメーカーとしての社会的役割等の認識が十分とはいえない。メーカーに対して、過剰な品質要求の自粛や剥がれにくいラベルの使用などについての環境配慮を求めていく必要がある。
  4. 1.8Lびんの回収ルートは、従来考えられてきた酒販店経由の回収より市町村の分別収集の方が、大きな比率を占めていることが明らかとなった。1.8Lびんだけでなく他のリユースびんも含めて市町村ルートで回収する仕組みや方法を検討する必要がある。
  • *1 本稿は「平成26年度1.8Lびんの再使用率向上策の調査研究」(日本酒造組合中央会・(株)ダイナックス都市環境研究所)の成果によるものである。
  • *2 1.8L壜再利用事業者協議会調べ(自主回収認定を受けるために1.8Lびんの利用事業者によって組織された団体)
  • *3 「酒類小売業者の経営実態調査結果」国税庁
  • *4 「民間回収ルート実態調査報告書2014. 5」容器包装の多様な回収システム研究会
  • *5 2015年3月に実施。20歳以上で1年間に日本酒・焼酎を購入した人を対象。インターネット調査。回答数1万件
  • *6 ガラスびん3R促進協議会の調査による
  • *7 2015年3〜4月実施。全国の酒造組合加盟1758社を対象。回答率47%(825社)