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1.8リットルびん(一升びん)の流通フロー分析

株式会社ダイナックス都市環境研究所 山本耕平・北坂容子・石垣歩・小田内陽太
日本酒造組合中央会 木内真二

1. 調査研究の目的

1.8Lびん(一升びん)の需要減少と回収率低下の要因と対策を検討するため、2014年に消費者やメーカー、販売店、びん商などに対する調査を実施した。その結果、家庭から発生する一升びんは小売店経由で回収されるという、従来から考えられてきた回収ルートは衰退しており、市町村の分別収集がその代替システムになっていることや、地域によって1.8Lびんの発生、需要に大きな違いがあることなどが明らかになった(*1)。こうした結果をふまえ、2015年の調査研究では1.8Lびんの回収率や再使用率向上に向けた対策を、地域ごとにきめ細かく講じていくために、1.8Lびんの地域別、季節別需要量と発生量、回収びんのフローの推計を行い、地域ごとの特徴と課題を検討した(*2)。

2. 回収率・再使用率の推移と低下の要因

1.8Lびんの出荷量(使用数量)は2008年2億3,280万本であったものが2014年には1億4,278万本と、6年間で約40%も減少している(*3)。特に、回収びんの使用本数の減少傾向は著しく42%も減少している。回収率・再使用率低下の要因として1. 家庭から酒屋経由で回収するルートが減少していること、2. キズのついたびんは使いたくない等の品質要求が高くなったことにより回収しても廃棄されるびんが増えた、3. 茶、黒以外の特殊な色やフロスト加工(すりガラス加工)のびん、ラベルが剥がれにくいびんなど、再使用しにくいびんが増えたこと、4. そのため洗びんコストや不良率が高まり回収びんのコストメリットが低下していること、5. 回収に不可欠なP箱不足等の問題がある。

一方、こうした問題は地域によって異なることも明らかになっている。かつては1.8Lびんは酒類だけでなく、醤油、ソース、その他の食品の容器としても多用されてきたが、現在ではほとんどが清酒と焼酎の容器として使用されている。そのため灘・伏見など大手の酒蔵の集積地が回収びんの需要が多いと考えられてきた。しかし今日では清酒より焼酎の方が消費量が多く(平成26年度の清酒販売量は約56万KL、焼酎(甲類、乙類)約86万KL)、それにともなって九州圏で1.8Lびんの需要が伸びている。回収びんの流通システムは、灘・伏見の大手の酒蔵への供給を前提に構築されてきたもので、コストの問題やP箱不足などの背景には需要構造の変化がある。

表-1 1.8Lびんの出荷数利用、回収率の推移

3. 1.8Lびんの需要、発生、回収量の推計

(1)推計の方法

1.8L壜再利用事業者協議会(1.8L協)が会員企業・団体(日本酒、蒸留酒、ミリン、ワイン、洋酒、醤油、食酢、ソース等)に対して実施している出荷数量、新びん・回収びんの使用本数等に関する調査データを基礎に、以下のように季節別・地域別の需要・発生数量を推計した。

出荷数量をそのままびんの需要量とみなし、酒税課税高、家計調査等によって需要量の月別変動を推計した。

製品は全国に流通するため、出荷量はそのままびんの発生量にはならない。そこで出荷数量の総計を都道府県別の酒類消費量(国税庁)、各製品の販売量(家計調査)のデータで案分し、さらに27年度に実施した市町村アンケート調査によって得られた都道府県別回収量などで補正して、地域別の発生量を推計した。また製品出荷から空きびんが排出されるまでのタイムラグ(例えば清酒も焼酎では、中身が消費されて空きびんとなる期間を1ヶ月以内70%、2ヶ月以内20%、3ヶ月以内10%とした)を業界関係者へのヒアリング調査をもとに推定し月別の発生量を推計した。

更にこの発生量をベースに、全国びん商連合会が年に3回調査している地域ブロック別在庫量を指標として、月別・地域別回収量(びん商のヤードに搬入された数量)と回収びんの使用数量(メーカーに納入できる状態に調整された量)を推計したが、本稿では発生量と需要量にもとづいて傾向と課題を論ずる。

図1 1.8Lびんの需要量と発生量推計の方法

(2)推計結果

1.8Lびんの需要が多いのは九州5,233万本、関西2,871万本、甲信越1,781万本、東北1,414万本の順である。発生が多いのは関東5,071万本、九州1,949万本、東北1,887万本、関西1,655万本の順である。月別の過不足を見ると、関東は年間を通じて発生量が需要量を大きく上回っており(発生優位地域)、九州、関西、甲信越は需要が上回っている(需要優位地域)ことがわかった。

12月に需要が発生を大きく上回り1月には発生が増えるのは、酒造りは冬季が中心で、年末年始に製品の需要が増えて空きびんの発生が増えるためである。

表1 地域別発生量と需要量の推計結果

(3)全国的なフローと課題

日本酒の生産量は灘(兵庫県)、伏見(京都府)で全国生産量の40%以上を占めており、かつてはこれらの地域から関東圏で消費され、発生した大量の空きびんが関西へ戻ってくるという東西の循環が大きな流れであったが、1.8Lびんの需要が焼酎にシフトし、関東から九州への流れが大きくなっている。関東圏は大幅な余剰があるため、九州、関西のみならず、新潟・東北へも供給している。こうしたフロー推計にもとづいて、酒造メーカー、びん商、P箱レンタル事業者等の関係者に対するヒアリングを行い、地域的な課題を整理した。

1. 北海道・・・かつては道内で循環していたが、需要減により余剰している。道外に出すためにコストがかかる。
2. 東北・・・日本酒生産量の回復で、びんは不足傾向。回収するためにはP箱が不足している。
3. 関東・・・大量発生地であるがびん商の減少、P箱不足など回収システムの脆弱化が進む。
4. 北陸・・・ほぼ地域内で需給はバランスしている。
5. 甲信越・・・需要に対してびんは大幅に不足しており、回収システムの強化が課題。
6. 中部・・・季節により需給の変動が激しい。びん価格が下落して集荷力が低下している。
7. 関西・・・もともと関東などから買い入れてきた。需要地であるが回収されていないびんが多いと推察される。大手メーカーは回収びんを使ってはいるが消極的。
8. 中国・四国・・・発生の方が多い。九州などへの流出が多く、地域内でびんが確保できないこともある。
9. 九州・・・関西に代わる1.8Lびんの最大の需要地となった。消費者の1.8Lびん入り製品に対する選好が高い。新びんとの競争が高まっている。

図2 月別・地域別の過不足状況

まとめ

限られたデータからであるが、全国一般で論じられてきた1.8Lびんの需要、発生について、地域別の量やフロー、課題を整理することができた。

特に、酒類容器の多様化が進む中で、清酒に代わって焼酎が1.8Lびんの需要を支えていることが明らかになった。また東日本大震災で消費が低迷していた東北地域で清酒の生産量、消費量が増加し、回収びんの需要が高まっていることがわかった。

1.8Lびんはメーカーが所有して循環させているビールびんとは異なり、オープンな市場で回ってきた。しかし回収業者や洗びん業者が減少してシステムそのものの存続が懸念されるほどである。1.8Lびんの循環は、酒造・酒類販売業界のみならず消費者も含めた社会の共同の資産であるという認識に立ち、地域ごとの需給など市場の情報把握と情報共有する仕組みの構築が喫緊の課題である。

  • *1 1.8 リットルびん(一升びん)の回収率・再使用率向上に関する調査研究(2015.廃棄物資源循環学会研究発表論文集)
  • *2 本稿は「平成27年度1.8Lびんの再使用率向上策の調査研究」(日本酒造組合中央会・(株)ダイナックス都市環境研究所)の成果によるものである。
  • *3 1.8L壜再利用事業者協議会調べ