これまでの取り組み

ニュースレター Vol.6

昨年11月26日・27日の両日、全国まち美化連絡会議及び地域交流センターの主催により、『第3回全国まち美化シンポジウム』が開催されました。今回は開催地である北九州市との共催により、「まち美化の実践と美化意識の形成」をテーマに、各地の美化実践事例の紹介に加え、まちの誇りを高めることをめざして、美化にどう取り組めばいいかを話し合いました。

また基調講演として、早稲田大学副総長の寄本勝美先生に、これからのまち美化における課題について、問題提起をいただきました。たいへん示唆に富むお話でしたので、以下にご紹介します。



「都市美化事業の現況と課題」

寄本勝美氏(早稲田大学副総長)

〜散乱ごみ対策の経過〜

霧が峰と池袋駅前周辺の美化実験

 霧が峰高原で散乱ごみの実態調査を踏まえて、散乱ごみ対策として大きな誘導看板(「200m先にごみ箱があります」)を設置する実験を行いました(1971〜72年)。そして、ごみ箱を置く場所に制限がある高原などでは有効であることがわかったのです。もちろん、ごみ箱を撤去する方がよいという意見が多いことも承知していますが、ただ撤去するばよいのではなく、どこかで必ずごみを処理しなければなりませんから、持ち帰りが無理ならば、観光地ではごみ箱がある場所まで誘導することの方が効果があるのです。
 また、駅前で販売されている飲料缶がどのように散乱するのかを、缶にシールを貼って追跡調査を行ったことがあります。池袋駅前、半径500mでの調査ですが、いろいろと興味深い結果が出ています。しかし、その後は駅前の散乱防止対策は進んでおらず、和歌山市など一部の駅前で実施されているのみです。

豊橋市で始まった“ゴミゼロ(530)”運動と町田市の取り組み

 豊橋市では、ごみの持ち帰りを中心とした“530運動”が起こったことで、まちはみごとにきれいになりました。この“530運動”がその後全国に広まったことは皆さんもご存じだと思います。また、町田市では、容器包装リサイクル法に則ってペットなどのプラスティック類とそれ以外のプラスティックを分けて集めるということが決まり、運動に「5371(ごみない)町田」という愛称をつけて住民の関心を高めています。

[海外の事例から]

シンガポールなどイギリスの植民地だったところは罰金等のペナルティが非常に厳しく、警察官だけでなく公務員の3分の1が反則チケットを発行する権限を持っています。一種の監視体制ともいえますが、罰則が厳しい分、行政は美化活動を協力に推進していて、大通りには50mに1個といってもよいほどの割合でクリーンボックスが置かれています。つまり、それでも捨てるならば捨てた人が罰を受けても仕方ないという考え方に基づいているわけです。決して行政が何もしないで罰金制度を採用したわけではありませんので、誤解のないようにしてもらいたいです。
 チューリッヒはステーション回収のルールが守られていて、美しい街並です。日本もステーションをどうやって美しくするかが課題です。
  ニューヨークは最近、きれいになりました。以前はごみ箱はほとんどありませんでしたが、現在は100m程の間隔に7,000〜8,000個のごみ箱を設置して散乱を防いでいて、都市行政にとって必要なことと捉えています。また、缶やペットボトルはデポジット効果で散乱していないように見えますが、一般の人はデポジットを利用していないし、デポジットを知らない人が多いようです。それでも缶が散乱していないのは、ホームレスの人が集めて売っているためだと思われます。

[今後の散乱ごみ防止とまち美化事業]

いいと思ったことはやってみよう

 ある会社が思い切って始めてみたことが、当たり前になるという例で、スティオン・タブはジュースからビールまで常識になりました。いいと思ったことはやってみるべきです。
 今回は、問題提起としていくつかの取り組みを取り上げたいと思います。

美化の評価制度

イギリスでは、TBGという政府の外郭団体がまち美化評価制度をつくって、評価する基準・方法を開発中です。その方法は係員が58の都市をまわって、主にごみの散乱状況からまちの美化を評価した結果を町に知らせるというものです。結果は知らせても提案、助言までは行なっていません。結果を踏まえてどうするかは町に委ねられています。こうした美化を評価する仕組は日本でも大いに参考になるはずです。

ポイ捨て禁止条例

法律を補完する意味での条例を、自治体は地域の独自性(多様性)に基づいてつくることができます。現在も各地でユニークな条例がつくられており、今後はそれを追いかけるように全国的な観点から法律をつくられることが予想されますが、自治体を制約する法律ができたのでは困ります。自治体の努力が活かされて広域的・全国的な問題に対応してもらわなければなりません。かつて公害問題で自治体が先駆的な政策を実施したときに、国がつくった法律が自治体を制約したことがありました。このようなことは繰り返してはなりません。
残念ながら日本には総合的な美化関係の法律はありません。各自治体は条例で効果をあげているものの、条例には「どう変化したか」、「散乱ごみがどう減ったか」を客観的に評価する基準がありません。次のステップで、「どう変わったか」を市民に公表するような手法をつくってみてはどうでしょうか。

その他、ポイ捨て防止を促すインセンティブ(誘導策)

 たとえば、ドライバーが車からごみを捨てる行為は、散乱ごみ問題では大きな問題です。ごみを捨てたドライバーには、優良ドライバーの資格の一部を剥奪するような制度があってもいいのではないでしょうか。こうしたルールがあるだけでも散乱を抑える効果が期待できます。6,000万人のドライバーがごみを捨てなくなるということは、日本人がごみを捨てなくなることに通じます。ポイ捨てに対して減点制を取り入れ、優良ドライバーの資格に組み込めば散乱ごみ防止に成果が期待できると思います。
 また、自動販売機に関しては、家庭系のごみと分けるために八丈島で実験しているように、飲料容器にデポジット制を採用するなどのように、設置者が散乱防止にもっと前向きに協力してもらえるような方法を考えてもよいと思います。

[自治体における環境美化事業の発展]

自治体は最低限のサービスを達成し、その上に乗せるシビルミニマムをつくってきました。であれば、サービスと共に、市民としてのエチケットやルールのシビルミニマムがつくられてもいいのではないでしょうか。これまではそういう作業はありませんでした。ポイ捨て条例でもエチケットとルールのシビルミニマムを市民みんなで考えることが必要でしょう。「時には家の周りを掃除しましょう」、「年に何回かは大掃除しましょう」、「河川の掃除に出ましょう」等、これが我々のまちのエチケット、ルールだというものを考える。それ以上はボランティアが行えばいい。そのようなミニマムを市民参加で考え、まちを評価する基準をみんなで考えていくことがこれから必要になると考えます。