これまでの取り組み

ニュースレター Vol.7

 前号で紹介しましたように、昨年11月に北九州市で『第3回全国まち美化シンポジウム』が開催されました。前号(第6号)では早稲田大学副総長の寄本勝美先生の基調講演の要旨を記載しました。
今回は、シンポジウムの最後に行われた『総括ディスカッション』から、鎌倉の美化の取り組みを事例として発表された藤井経三郎氏((株)RIVアソシエーツ代表取締役)と米村洋一氏(地域交流センター幹事・多摩大学総合研究所客員主任研究員)のコメントを紹介します。まち美化活動の参考になればと思います。

藤井経三郎 氏

 鎌倉では市民が率先して散乱ごみの防止を実践する「鎌倉美化市民条例」の制定をめざして、市民が主導的に運動をはじめています。しかし、条例がなくてもまちはキレイというのが本来の姿だということで、「クリーン鎌倉ひとマス運動」を実践的に行いました。
 どこの都市でもいえることですが、点や線の清掃活動は活発です。それを面にひろげ、計画的に全市をカバーできることを目標にしたもので、いわば「全市まち美化推進市民事業」ということです。
 手法としては、鎌倉市域を500m四方のマス(グリッド)に仕切り、そのひとつを3〜5名のチームを編成して清掃するというもので、鎌倉の場合は約130のマスでカバーできます。約240近くある社会公益性の活動を続けている市民団体、さらに学校やこども会、町内会自治会も加わると十分可能と考えています。
 今回の実験は鎌倉駅周辺を250m×125mに仕切り、8マス(その後本年1月に大船駅周辺4マスで第2次実験)を対象に実施しました。その結果、散乱ごみの調査と清掃とともに、普段と違った目で自分のまちを認識することになり、参加の評価を得ました。
 一方、矩形状のマス内の移動に無駄があるなどの指摘もあり、課題が残りましたが、マスコミの予想以上の反応もあってほぼ成功と考えています。
 鎌倉市では平行してアダプト方式(今号の美化団体の紹介コーナーで説明)を若宮大通りで導入することも計画中で、類似の実験が官民双方で進められることになっています。この「クリーン鎌倉ひとマス運動」は科学的、実証的なごみの調査、清掃だけでなく、マス内における景観・バリア・防災などの評価チェックと対応といった展開も可能で、その結果をGIS(地図情報システム)にまとめ、まちづくりに重要な素材・資源として活用することを視野に入れています。
 このことは当然行政の書く領域の横断化を促進することになり、行財政改革の端緒にもなり得るものと考えます。また、市域周辺は隣接市域を含むこととなり、生活圏を共有する隣市の市民と行政との連携・協働・交流が期待できます(大船での実験には横浜市の職員、市民が参加しました)。

米村洋一 氏

   

鎌倉市でごみを何とかしようと取り上げたのは、大正4年の鎌倉同人会の発足までさかのぼりますが、開発する側と歴史文化を守る側の対立、行政と文化人の対立が長く続いていました。しかし25年ほど前から、鎌倉に住み続けたい一般市民が、“自分たちの街を自分たちで何とかしよう”という動きが出て、37の団体がごみを拾うことを条件に「鎌倉を美しくする会」を発足させました。運動自体は会のマンネリ化を防ぐために、10年で終わりにすることで始めました。どんな活動も10年も経過すれば一斉清掃やイベント活動等も地域に定着しますので、クリーン活動を行政の行事に取り込んでもらうことを条件として行政に渡し、市民は他の環境問題に取り組んでいくことにしました。今では自分たちの地域を自分たちで管理しようと,行政職員も一緒に参加して活動している状況です。
 市民と行政はこと環境問題に関しては、対立の構造になりやすいが、散乱問題の解決にはまずごみを拾うことから始まるものなので、行政に文句を言うだけでなく、市民と行政が意識的に協力して活動する必要があます。
 それをイベントやお祭りのような形をとって社会実験として行いますと、また別の次元の仕組みづくりが生まれ、そこに企業の力(技術、ノウハウ、資金)でも協力してもらえます。うまく市民・行政・企業の役割分担を行いますと個別に行うよりは効果が上がります。
 21世紀はフィールドワークの時代で、街に出て実際に活動に取り組み、その活動を仕組みとして定着させたり、技術として発展させたりすることを学問や知識を持った市民が行い、行政はコーディネーターに徹すると上手く行くのではないでしょうか。しかし、都市の中心部など、都市空間を管理するのはそれなりの仕掛けや効率を上げるための道具を使うこともありますので、行政が行った方が良い結果が生まれる場合もあります。
 ルールづくりも含めて、行政のやること、市民のできることは性格が違うということをお互いに知った上でないと、ルールなどは上手く徹底しません。どこが違うかというと、市民は良いと思ったら当然できるものは実行する。行政はこれが良いと思っても、他にもっと良い手段があるのではないか、これを行うことで他に問題が起きないかなどと絶えずバランスを考えなくてはなりません。つまり全体を見た上での判断ということになるのですが、実際は全体を見られないから結局はやらないということもあります。市民が監視しているので、失敗が許されないという脅迫観念があるので、良いと思っても簡単に飛びつくことができないのです。
 そこでルールづくりでは、「これならみんなが守れそうだということをやってみる」といった試みをする時には、市民側の身軽な動きが役立ちます。これまで、世の中になかったような新しい仕組みづくりに市民参加を取り入れるということは、民間のフットワークの良さ、バランス感覚を多少気にしないでもやれるという良さと、バランス感覚と継続的に長く続けていくという行政の体質をうまく使い分けていくことでもあります。
 最後に、藤井さんが最初に触れているように、鎌倉市でも現在「鎌倉市美化市民条例(ポイ捨て条例)」制定に向けた動きがありますが、ただ条例を作るのではなく、条例を生かす市民活動や事業者の取り組み、行政の具体的施策の内容が大切です。その手始めに市民の自発的な「クリーン鎌倉ひとマス運動」が実験的に行われました。
観光都市でもあり、環境自治体の看板を掲げている鎌倉では、市民・事業者・行政が三位一体となって地域のより良い環境を育て、保全していく仕組みに向けた方が挑戦が始まっていると言うことではないでしょうか。