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これまでの取り組み

ニュースレター Vol.8

美化キャンペーンの手法についての考察

せんだい・みやぎNPOセンター

 「まち美化連絡会議」では各地の事例紹介を通じてまち美化のしくみのあり方を皆さんとともに考えたいと思います。今号ではどこの自治体でも頭を悩ませる美化の「啓発キャンペーン」についての問題提起です。
 平成10年度から仙台市が展開している『ポイ捨てごみから、まちづくりを考える』キャンペーンを題材にして、「せんだい・みやぎNPOセンター」でまとめた調査報告書から、事務局の責任で要約してご紹介します。

 

●自発性を励ますものは、自発性である

 日本の国ほど、美化や公徳心を訴える標語や看板がやたらに街に設置され、大音響で管理放送が跋扈している国はないだろう。それなのに、私たちの社会から公徳心や公共の物を大切にする心が消えかかっていることは不思議なことだ。大部分の人たちは“公”から一方的に送られてくるメッセージに対してその内容を考えるのではなく、無意識に「聞き流す態度・見逃す態度」をとっているように思われる。
 四六時中いたるところで建前としての公徳心をお上が説き、人々が自らの言葉で語り合うことを阻害しているため、公徳心、公共心の根拠がかなり薄いというのがこの国の現実である。「ポイ捨てごみ」についての新しいキャンペーンを始めるにあたって、私たちが留意すべき視点はここにあった。
 まず、キャンペーンによって「行政が公徳心を説くことをやめる」ことである。行政が公徳心や道徳を説かないという選択をすれば、公徳心や公共心のメッセージは、私たち市民の明確な、そして自発的な態度によって示さなければならない。すなわち「自発性を励ますものは、自発性である」。
 つまり、キャンペーンに参加して行動する市民から、公徳心や公共心が伝えられることによって、さらなる人々の自主的な参加と行動を促し、励ますものである。「行政により単独キャンペーンから、市民の自発的な参加による共同キャンペーンへ」という「市民参加」のシステムづくりが緊急に要請されていると考える。

●長期的な戦略に基づく統一的キャンペーンが必要である

 鎌倉市でごみを何とかしようと取り上げたのは、大正4年の鎌倉同人会の発足までさかのぼりますが、開発する側と歴史文化を守る側の対立、行政と文化人の対立が長く続いていました。しかし25年ほど前から、鎌倉に住み続けたい一般市民が、“自分たちの街を自分たちで何とかしよう”という動きが出て、37の団体がごみを拾うことを条件に「鎌倉を美しくする会」を発足させました。運動自体は会のマンネリ化を防ぐために、10年で終わりにすることで始めました。どんな活動も10年も経過すれば一斉清掃やイベント活動等も地域に定着しますので、クリーン活動を行政の行事に取り込んでもらうことを条件として行政に渡し、市民は他の環境問題に取り組んでいくことにしました。今では自分たちの地域を自分たちで管理しようと,行政職員も一緒に参加して活動している状況です。
 市民と行政はこと環境問題に関しては、対立の構造になりやすいが、散乱問題の解決にはまずごみを拾うことから始まるものなので、行政に文句を言うだけでなく、市民と行政が意識的に協力して活動する必要があます。
 それをイベントやお祭りのような形をとって社会実験として行いますと、また別の次元の仕組みづくりが生まれ、そこに企業の力(技術、ノウハウ、資金)でも協力してもらえます。うまく市民・行政・企業の役割分担を行いますと個別に行うよりは効果が上がります。
 21世紀はフィールドワークの時代で、街に出て実際に活動に取り組み、その活動を仕組みとして定着させたり、技術として発展させたりすることを学問や知識を持った市民が行い、行政はコーディネーターに徹すると上手く行くのではないでしょうか。しかし、都市の中心部など、都市空間を管理するのはそれなりの仕掛けや効率を上げるための道具を使うこともありますので、行政が行った方が良い結果が生まれる場合もあります。
 ルールづくりも含めて、行政のやること、市民のできることは性格が違うということをお互いに知った上でないと、ルールなどは上手く徹底しません。どこが違うかというと、市民は良いと思ったら当然できるものは実行する。行政はこれが良いと思っても、他にもっと良い手段があるのではないか、これを行うことで他に問題が起きないかなどと絶えずバランスを考えなくてはなりません。つまり全体を見た上での判断ということになるのですが、実際は全体を見られないから結局はやらないということもあります。市民が監視しているので、失敗が許されないという脅迫観念があるので、良いと思っても簡単に飛びつくことができないのです。
 そこでルールづくりでは、「これならみんなが守れそうだということをやってみる」といった試みをする時には、市民側の身軽な動きが役立ちます。これまで、世の中になかったような新しい仕組みづくりに市民参加を取り入れるということは、民間のフットワークの良さ、バランス感覚を多少気にしないでもやれるという良さと、バランス感覚と継続的に長く続けていくという行政の体質をうまく使い分けていくことでもあります。
 最後に、藤井さんが最初に触れているように、鎌倉市でも現在「鎌倉市美化市民条例(ポイ捨て条例)」制定に向けた動きがありますが、ただ条例を作るのではなく、条例を生かす市民活動や事業者の取り組み、行政の具体的施策の内容が大切です。その手始めに市民の自発的な「クリーン鎌倉ひとマス運動」が実験的に行われました。

観光都市でもあり、環境自治体の看板を掲げている鎌倉では、市民・事業者・行政が三位一体となって地域のより良い環境を育て、保全していく仕組みに向けた挑戦が始まっているということではないでしょうか。