これまでの取り組み

ニュースレター Vol.10

前号に続き、「第4回全国まち美化シンポジウム」において、盛岡先生にお話いただいた内容の要約の後編を掲載いたします。

散乱のない快適なまちづくりのために(その2)

盛岡 通 (大阪大学工学部地球総合工学部教授)

●ポイ捨て禁止条例をめぐる試み

 公共空間のごみの散乱がクリーンアップ等の努力にも関わらずなかなか止まらないないし、労力などの限界、いたちごっこということもありますが、公的な権力(取締まりをきちんと法的体系をもって行うという意味)、現状の軽犯罪法あるいは廃棄物処理法にお願いするというのも難しい。
 また、散乱の原因の1つになっている、自動販売機の周辺で回収容器を設置して欲しいということすら販売者にお願いするのは、法的に担保されていないということがあり、その辺りから禁止条例の方向に進んだようです。その条例に罰則規定を設けることが、散乱防止になるかどうかというのは意見の分かれるところです。
 その中で、散乱防止あるいは環境美化の条例がどれくらい策定されようとしているかを見ると、和歌山の取り組みが1つのエポックメーキングになったようですが、その後急速に「検討中」または「制定している」という自治体が増えてきました。その中で罰則規定を設けたのが約4分の1くらいですが、大事なポイントは美化条例制定後、制定だけで散乱防止が成功したかということだと思います。どれだけ当事者として関わってくれる気持ちがあるのか、パートナーシップ関係者の普段の取り組みということが大事ではないかと思います。
  A市では美化条例制定前に、先進的都市へのヒアリングをまとめ、全体として最も散乱の度合いのひどいところ、あるいは地域の協力でクリーンアップ等に参加していただけそうなところに、環境美化重点地区を設けました。ごみ箱も分別用の回収容器としてデザインの考慮をしたり、クリーンアップの回数を増やしたりしなければならないということでした。また、美化推進委員という制度を設け、100〜200名くらいの推進員を任命しているところもありますが、事業者が参加できる枠組みを設けることを考えていただけたらと思います。
 また、罰則規定を設けている自治体もありましたが、A市では罰則規定は望ましくないという立場の審議会のメンバーから、ポイ捨て条例よりは廃棄物処理法をきちんと運用することを求められました。それから罰則をつけても検挙する効果的な手段がないということでずいぶん議論がありました。ある自治体では現場を見つけてそのまま警察に告発してもらうとのことでした。事情聴取の上、検察に告発してもらうことも可能という解釈もありますが、実際にはそういった手続きに時間を要するぶん費用もかかるということです。そして罰則規定があって実際に発動されないままとなると、法制度全体に対する信頼を失うということです。
 しかし、罰則付きであることによって歯止めがかかったり、間接罰則として警察に告発して行政罰を与えることは抑止力にはなります。市民の苦情を聞いても対処する根拠がなかったが、制度化で行政が原因者を割り出して注意することもできます。行政による注意等の根拠を条例が提供でき、相当悪質であれば告発も可能であるという条例も整えたいところです。
 また、市民が散乱している人に注意を促したときにトラブルが起きないように、市の方で対処するのであまり厳しく注意しないでくださいということで対応しています。ですが、数少ない市の職員が常に出て行くというのは大変ですので、シルバー人材センターに委託をしているわけです。  次に問題になったのは、清掃パトロールの時間帯です。現在、環境局の職員が土曜日、日曜日は交代で出ていますが、今後は地域社会できっちり支える構造にしていかないといけないと思います。

 

●廃棄物ゼロへのアプローチ

 私たちは最終的に脱物質化、サービス中心で物質の消費を少なくするという方向に進んでいきます。ペットボトルを回収し、それを三角コーナーに再生するよりはリサイクル衣料にする。できるだけ高い水準の物にリサイクルしていく方向に持っていきたいと思います。
 環境美化を推進しようという皆様に是非お願いしたいのは、我々の社会はやがて廃棄物ゼロを目指します。それは消費者、生活者の側から廃棄物ゼロを目指すのではなく、産業主体自らも廃棄物ゼロを目指しているのだということをまず申し上げます。ビール会社は製造中に出てくる副産物は全部ゼロにする。あるいは、使いきりカメラ等の商品は、完全に店頭で回収して再生し、もう一度再生品化する。そういう流れが当たり前になってきています。
 次に、あらゆる産業社会の担い手である事業者が環境マネジメントシステム、いわゆるISO14001の認証取得という方向に動いています。既に企業2,000社が認証登録されたそうです。ホテルも導入しましたし、運送会社も、そして自治体も導入することになりました。この環境マネジメントシステムは自主的な目標を掲げるということですから強制ではありません。しかし、1年経った時にそれが達成できたかどうかを自ら評価するだけでなく、外部監査が入ります。その折に昨年掲げた目標が達成できなければ、今年度どうしますかというふうに判断を求められます。そうすると、昨年はできなかったので今年はもう一度チャレンジして、もっと高い水準を掲げて頑張りますと言わざるをえません。そういうことで、自主的な努力をしなさいというように、子供を育てるような形のシステムになっているのは非常に良いと思います。
 昨今のビジネス誌には環境会計という言葉が非常にたくさん出てきます。企業は如何ほど環境保全に費用を費やしているか、また未来に向かって環境保全するための投資を行っているかということが、その企業、事業所の環境保全に対する取り組みを判定する、あるいは評価のバロメーターになってきています。これは最終的に環境負荷を小さくするパフォーマンスに結びつかないといけません。我々の社会は市場社会ですから、市場社会の最もわかりやすい指標はお金です。お金をどういうふうに扱ったのが、その使い方において環境が重視されてきている。しかもその重視している環境への取り組みにいくら使ったかということを環境報告書で報告するということが大事です。既に大手は20社くらい報告していますし、来年になったらそれが200社になるでしょう。こういう環境会計の中に環境美化、あるいは企業における環境貢献という分野も当然含まれて、社会的に評価されるようになり、エコ投資に結びつく。環境配慮された企業には投資の資金が回るということです。現在まだ我々の社会はバブル以降のさまざまな問題を引きずっていますが、環境重視型の経営に移っていくはずであると思っています。
 棄てることをなくすことは非常に困難ですが、根気良く回収と美化を続ける「継続は力なり」ということではないかと思います。政府の役割よりは民間、市民の快適でかつ効率的な活動によって置き換えられていく。始めは補完的であると思われますが、こちらが主役になる世界が生まれてくると思っています。環境美化の活動が環境基本計画やアジェンダの中でも、散乱ごみの問題あるいは地域美化の問題を積極的に取り上げていただき、環境美化が環境保全全体の中でも大変重要な柱であるということを皆さん方で確認、理解していただきたいと思います。消費者運動や水環境を考える運動の中では石鹸が常に原点であったように、容器包装材あるいは大量の資材を使う社会における廃棄物問題の原点は散乱にあったというところから、暮らし方を変えていくような持続可能な社会に向けての運動をさらに展開していただきたいと思っています。(文責:事務局)