ニュースレター Vol.13
1月30・31日、第5回全国まち美化シンポジウムが開催されました。
当会議主催の「全国まち美化シンポジウム」。今回は東京都新宿区との共催で、環境問題に熱心に取り組むホテル・「ヒルトン東京」を会場に行われました。まち美化システムのつくり方・進め方―パートナーシップから考える―」をメインテーマに、行政による中心市街地美化システム・子どもたちへのまち美化の働きかけ方法などに関して活発な議論が交わされました。とくに、NPO法人の「グラウンドワーク三島」事務局長・渡辺豊博氏のご講演は好評をいただきましたので、以下にその抄録を掲載します。
「パートナーシップがまちを美しくする」
渡辺豊博(NPO法人グラウンドワーク三島事務局長)
●なぜ三島で「グラウンドワーク」なのか
私たちの活動は、ちょうど10年前にごみ拾いから始まった。三島市の中心に、源兵衛川という川がある。三島はもともと「水の都」と言われ、富士山流域からの地下水が豊富に湧き出ていたのだが、その頃は、企業による地下水のくみあげや上流域の国有林荒廃による保水能力低下などのため、市内の水路はだんだん枯れ、生活排水による悪臭もひどくなった。家の窓から川にごみを捨てる人も増えてきた。
それらを批判するだけではなく、具体的な問題解決につなげるためにはじめたのが、三島のグラウンドワークである。グラウンドワークはイギリスを発祥とした、パートナーシップで進める地域環境改善運動のことである。現在私たちは、「右手にスコップ・左手に缶ビール」を合言葉に、議論より行動重視で取り組んでいる。
●グラウンドワークの成果
グラウンドワーク三島は、市民・企業・行政の三者の仲介人役を担う、まちづくりの専門集団である。18の市民団体で構成され、短期から長期的見通しまで考慮してまちづくりの戦略を立て、実行している。
源兵衛川では、当初うどんのごちそう付きでごみ拾いへの参加者を募集した。確かに最初は1200人の参加があったが、雪の日は3人しかこなかったといった経験を積み、川をきれいにするには、やはり人の心を変えることが重要だと気がついた。そして、まちの外の人に参加してもらう「水辺ごみ拾いツアー」などもまじえ継続的に取り組むうち、川はだんだんきれいになってきた。ずいぶん時間がかかったが、市民が一人ひとりやり続けることで、地域に対する説得力が高まった結果だと思う。
●パートナーシップの重要性
グラウンドワーク三島では、市民・企業・行政の三者を同じ場に絡ませることをとりわけ重視している。地域の新しい社会システムをつくるには、パートナーシップを通じて三者がそれぞれ自己変革し、より質が高く幅広い、人々の「こころざし」に支えられたネットワークを形成することが必要だからだ。
私たちはなにかことを起こそうとする場合、まず町内会にアプローチし、役員クラスの人に、たとえばごみ拾い・空き地の公園化・遊水地の保全・井戸の再生などを提案する。
そして、実施に向けた住民の合意を得るために、先進地見学会などを通じ地域の融和を広げ、自分たちへの信頼性を高めて、地域の「やる気」を引き出す。そこまでが自分たちの役目だ。
町内会がまとまれば、今度は行政である。行政はなにごとにつけ縦割りだが、長い時間働きかけるなかで、市役所内に「水と緑のまちづくり委員会」という組織が生まれた。今ではここを通せば、すべての関係課に話が伝わるようになっている。私たちグラウンドワークが参加することによって、はじめて役所に横のネットワークができた。
●ごみ拾いの意味とは
ごみを拾う意味は、人のこころを変えることにある。私たちは子どもたちと一緒にずっとごみ拾いをしているが、これは、ごみを捨てない子どもの心を育てているということなのだ。
しかし、よく子どもにごみ拾いをやらせようとか、環境教育が必要とはいうが、本当はその前に重要なことがある。大人の教育だ。まちがきれいになるよう、ぜひ、真なる教育実践によって大人が変わって欲しいと思う。